戦後のわが国は世界各国から「スパイ天国」と呼ばれて久しい。
わが国は最先端の科学技術を持ち、世界中の情報が集まる情報大国でありながら、世界のどこの国でも制定されているような「スパイ防止法」が存在しない。そのために、わが国で某国の工作員がスパイ活動を働いて捕まっても、軽微な罪しか問うことができない。したがって、情報収集やわが国の攪乱の使命を帯びて派遣された「スパイ」にとってわが国は、あまり疑われることなく情報収集や工作活動ができる天国のような国なのである。
1985年に自由民主党から「公務員」の守秘義務を定め、第三者へ漏洩する行為防止を目的とした「スパイ防止法」が自由民主党所属議員により衆議院に議員立法として提出されたが、表現の自由に抵触するとしてマスコミなどから批判され、全野党が反対して審議拒否が続き廃案になった経緯がある。その頃から公務員やマスコミや野党には、他国に繋がる怪しい人物が少なからずいたはずなのだが、今では与党においてもどこかの国のスパイのような人物が相当数いることは確実だと思う。
中国共産党政府が2017年06月27日に公布・同年06月28日に施行した『国家情報法』という法律がある。この第七条の怖さはマスコミで全く報じられないが、とんでもない内容である。
第七条 いかなる組織及び個人も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。
国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人及び組織を保護する。
「中国の国家情報法」国立国会図書館 主任調査員 岡村志嘉子 論文に所収
こんな法律があればどこの国においても、自国に滞在している中国籍の人間のかなりの者が「スパイ」である可能性が高いと警戒されると思うのだが、「平和ボケ」のわが国の企業や役所や大学などの組織の多くはそのような警戒をほとんどしていないのではないだろうか。「防諜」という基本的な考え方が広く国民に定着していなければ、知らず知らずのうちに国が他国に奪わることになりかねない。
GHQが焚書処分した書籍の中で、タイトルに「スパイ」「第五列」「謀略」「工作」「防諜」「秘密」という言葉を含む書籍を探すと、全部で51冊がヒットした。そのうち、19点が「国立国会図書館デジタルコレクション」でネット公開されている。
GHQに焚書処分された新井辰男 著『スパイと防諜』という書物の冒頭を紹介させていただく。「スパイ防止法」が国会で提案もされなくなった今のわが国は、ここに書かれているよりもさらにひどい状態であると考えて良いだろう。
スパイは巷に氾濫している。眼色毛色の変わったスパイが東洋の君子国を舞台に踊りぬいている。さらに多数の日本人が彼らの吹く笛にうつつをぬかして踊らされている。
内閣情報部編集の防諜映画「スパイは君だ」ではスパイは我々の周りに氾濫している。この映画を観ている人々の中にもスパイがいるかもしれないと気味の悪いことを言う。全く何処にスパイがいるか判ったものではない。日本にいる数万の外国人がみんなスパイだとは言わない。彼らのうちには真に親日家もあり、スパイすることなど微塵も考えていない人々も少なくないであろう。
だが一般に日本に於けるスパイ活動の中心が在留外国人中のある者であることに異論はない。特に注意を要するのは金に眼のない亡者ども、外国崇拝の腑抜けども、外国人を相手に生活の糧を得ている者等々の日本人中に、外国に頣使(いし:顎で使う)され欣然としてスパイを稼いでいる大馬鹿者の案外多いことである。
さらに忠良な法人が知らずしらず彼らに利用されている場合がすこぶる多いことは大いに一考再考の要がある。スパイは君だというのも一寸はげしいが、スパイは君の周囲に氾濫しているということは国民の脳裏に叩き込み、共に倶に警戒自粛すべきである。
なぜスパイするか?の質問に対しては近代戦にスパイは付き物だと簡単に答えたい。近代戦争には何故スパイが必要か、曰く近代戦争は国力総合戦と言おうか総国力戦と言おうか、とにかくあらん限り根限りの体力、気力、知力、財力等々を傾倒して、これでもかこれでもかと徹底的に打ちのめさなくては置かないというやりかたであるから、相手国の軍事国防の事柄は固より、政治、経済、外交、天然資源、産業、貿易、交通運輸、思想、衛生状態等、国内および国際情勢の一切合切は、採って以て策戦の資材たらざるものはない。
だからさかんにスパイするのである。そしてひたすら「来るべきもの」のために備えるのだ。戦争に勝つことは絶対に必要だ。戦争に勝つには敵を知ることが絶対に必要である。だからスパイするのである。優秀なスパイはたった一人で一個師団以上の働きをすると言われているが、誠にさもありなん。重要な軍事上の機密事項をスパイし得たら、一個師団や二個師団の兵力は何のそのである。こう書いて来るとスパイしないのが馬鹿なように見える。実際近代戦争の特質から言っても、国際情勢の緊迫状態から言っても、スパイしないではいられないまでに状況は迫っていると言って良い、凄い世の中ではある。
新井辰男 著『スパイと防諜』新光閣 昭和14年刊 p.1~3
以下が、GHQが没収処分して、戦後の日本人に読めなくさせた、タイトルに「スパイ」などが存在する書籍のリストであるが、このような知識が、今こそ日本人には必要なのではないだろうか。
タイトル | 著者・編者 | 出版社 | 国立国会図書館デジタルコレクションURL | 出版年 |
アメリカの対日謀略史 | 宮慶治 | 大東亜社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1437004 | 昭和17 |
陰謀は輝く | 長島隆二 | 平凡社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1268540 | 昭和4 |
英国スパイ五百年史 | 牧 勝彦 | 刀江書院 | ||
英国のスパイ救世軍を爆つ | 松本勝三郎 | 秀文閣書房 | ||
空軍支那の秘密 | 国際経済研究所 編 | 国際経済研究所 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1209772 | 昭和9 |
軍用資源秘密保護法解説 | 田村眞作 | 新光閣 | ||
経済戦略と経済参謀 | 東京商大 経済指導研編 | ダイヤモンド社 | ||
皇国大日本とその使命 怖るべきユダヤの国際的大秘密結社 | 熊谷 白 | 建国講演会 | ||
国際秘密戦と防諜 | 丸山義雄 | 実業之日本社 | ||
国際秘密力の研究 第二輯 | 柳沢七郎 | 国際政経学会 | ||
国際秘密力の研究 第三輯 | 柳沢七郎 | 国際政経学会 | ||
国際謀略の話 | 柴田武福 | 青山出版社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450664 | 昭和17 |
国策参謀本部設置案 | 資源整備調査局 | 資源整備調査局 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1274282 | 昭和8 |
日本の危機と英国スパイ団の跳梁 国防国家建設に関する進言書 | 滝田錬太郎 | 滝田錬太郎 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460586 | 昭和15 |
国家総力戦防諜講話 | 大坪義勢 | 大日本雄弁会 講談社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450659 | 昭和16 |
これからの防諜 | 宮本亨一 | 育生社弘道閣 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450654 | 昭和19 |
思想戦と国際秘密結社 | 北條清一 | 晴南社 | ||
支那事変に於ける 敵の戦場思想工作の一観察 | 教育総監部 編 | 教育総監部 | ||
支那における 列強の工作とその経済勢力 | 原 勝 | 学芸社 | ||
支那秘密結社の新情勢 | 三宅儀明 編 | 中国通信社 東京支局 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1437528 | 昭和11 |
重大国事の秘密を語る | 頭山満 述 | 東亞書房 | ||
情報乗り出した ソ連謀略外交の内幕 | 伊藤 稔 編 | 三邦出版社 | ||
新政権樹立工作の展望 | 田中香苗 | 東亞同文会 | ||
スパイ軍隊 | 市来 亮 | 越後屋書房 | ||
スパイ戦術 | 中島 武 | 日東書院 | ||
スパイ戦術秘録 | 宝来正芳 | 良栄堂 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1441193 | 昭和12 |
スパイと防諜 | 新井辰男 | 新光閣 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1462739 | 昭和14 |
スパイの手口 | R.W.ローウァン | 東洋堂 | ||
世界的秘密結社の検討 | 野田 茂 | 栄養の日本社 | ||
世界に暗躍する 英国第五列を暴く | 那須肇 | 昭和書房 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1446011 | 昭和15 |
赤軍将校陰謀事件の真相 | 山内封介 | 国際反共聯盟 調査部 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1120546 | 昭和12 |
総力戦と宣伝戦 ナチス思想謀略の研究 | 水野正次 | 新民書房 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450656 | 昭和16 |
狙日第五列 : 見えざるスパイ | 山中峯太郎 | 同盟出版社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1106572 | 昭和15 |
第一次大戦の謀略 | スメラ民文庫 編輯部 編 | 世界創造社 | ||
大東亜戦争の思想謀略 | 水野政次 | 霞ヶ関書房 | ||
ドイツ的戦略とは : 戦争と謀略・宣伝 | 水野正次 | 名古屋新聞社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1463175 | 昭和15 |
日本防諜史 | 山本石樹 | 人文閣 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460339 | 昭和17 |
日本を狙うスパイ | 仙台岩太郎 井東一雄 | 八雲堂 | ||
不法の秘密 反基督の印章 | エス・テレス | 破邪顕正社 | ||
米国の対日謀略史 | 伊藤七司 | 皇国同志会 | ||
防諜科学 | 不明 | モダン日本社 | ||
防諜関係法規類纂 | 石川信之 編 | 日本昭和書籍 | ||
防諜劇名作選 | 三谷節次 編 | 協栄出版社 | ||
防諜読本 | 高橋邦太郎 | 富士出版社 | ||
防諜法令集 | 井島政五郎 | 徳行館 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1273753 | 昭和17 |
謀略決戦 | 大東研究所 編 | 山海堂出版部 | ||
マソン結社の秘密 | 久保田栄吉 訳 | 破邪顕正社 | ||
猶太人の陰謀と排日問題 | 勝井辰純 | 久栄堂書店 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1021207 | 大正13 |
ユダヤの対日謀略 | 長谷川泰造 | 晴南社 創立事務所 | ||
猶太民族と世界制覇の陰謀 | 松村吉助 | 富山房 | ||
列国のスパイ戦線を衝く | 矢口圭輔 | 厚生書院 |
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ブログ活動10年目の節目に当たり、前ブログ(『しばやんの日々』)で書き溜めてきたテーマをもとに、2019年4月に初めての著書である『大航海時代にわが国が西洋の植民地にならなかったのはなぜか』を出版しています。
通説ではほとんど無視されていますが、キリスト教伝来以降ポルトガルやスペインがわが国を植民地にする意志を持っていたことは当時の記録を読めば明らかです。キリスト教が広められるとともに多くの寺や神社が破壊され、多くの日本人が海外に奴隷に売られ、長崎などの日本の領土がイエズス会などに奪われていったのですが、当時の為政者たちはいかにして西洋の侵略からわが国を守ろうとしたのかという視点で、鉄砲伝来から鎖国に至るまでの約100年の歴史をまとめた内容になっています。
読んで頂ければ通説が何を隠そうとしているのかがお分かりになると思います。興味のある方は是非ご一読ください。
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