中国の五四運動を煽動した黒幕は新聞にしっかり報じられていた

中国排日関連

二十一ヵ条要求を提出した当初には排日運動は起きていない

 このブログで何度か書いたが、中国人に排日運動を仕掛けたのはアメリカ人の宣教師であったことが戦前の書物や新聞記事に明確に記されている。おそらくこの時代に生きた日本人にとってはそのことはそれが常識であったと思うのだが、戦後の歴史叙述ではそのことがスッポリ抜け落ちていて、学生時代にはそのような説明を聞いた記憶がない。

たとえば、一般的なわが国の教科書ではこう記述されている。

 中国では…1911年辛亥革命がおこり、翌年には、南京を中心に孫文を臨時大統領とする中華民国が成立し、新王朝はついにほろんだ。しかし、国内にはなお旧勢力が各地に分立し、軍閥の実力者袁世凱が孫文をしりぞけて大統領となり、北京に政権を樹立した。 第2次大隈内閣はこのような混乱に乗じて、1915 (大正4) 年、中国の袁世凱政府に中国における日本の権益を大幅に拡大する内容のいわゆる二十一ヵ条の要求を提出し、最後通牒を発して要求の大部分をみとめさせた。しかし、中国国内ではこれに反発して排日気運が高まった

『もう一度読む 山川日本史』p.270
大正4年6月10日 時事新報 神戸大学新聞記事文庫 外交16巻-34

 三国干渉で譲歩を余儀なくされたわが国は,日英同盟に基づき第一次世界大戦に連合国側として参加し,一九一四年に膠州湾のドイツ軍を破り,ドイツが保有していた山東省の利権を受け継ごうとし一九一五年一月十八日に加藤高明外相は袁世凱大統領に二十一ヵ条の要求を提出し、中国は五月に「山東省に関する条約」でそれを承認しているのだ。この年には排日暴動は起きていない。

大正8年8月24日 東京朝日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交29-148

 ところが、一九一九年ヴェルサイユ条約で山東省のドイツ利権をわが国が承継することが認められると、中国はアメリカの使嗾によりヴェルサイユ条約の調印を拒絶し、その後一般の中国人に排日気分を高めていったのである。上の画像は中国が条約調印を拒絶した事情を報じた東京朝日新聞の記事である。
 山川の教科書を普通に読めば、わが国が提出した二十一ヵ条要求に中国が反発して、次第に排日気分が高まっていったと理解するしかないのだが、実際に中国で排日運動が高まったのはわが国が二十一ヵ条の要求を提出した四年以上あとの話であることを知るべきである。

「五四運動」の黒幕を報じる新聞記事

 一九一九年にわが国がパリ講和会議の国際連盟委員会において、わが国が「国際連盟規約」中に人種差別撤廃を明記すべきことを提案して以降、中国各地で日貨排斥が行われるようになったのだが、大規模な排日暴動が五月四日に北京で起きていて(五四運動)、わが国では各紙がこの事件を報じている。

大正8年5月7日 報知新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交23巻-30

 上の画像は大正八年(一九一九年)五月七日の報知新聞の記事だが、次のように解説されている。

 暴動の中心が北京大学生なりとの説に於て、或は其背後に在支米国宣教師並に米人の怖るべき煽動の魔手が潜み居るに非ざる無き乎の疑念あり。北京大学は、基督教主義の教育を施す目的を以て米人宣教師が千八百七十年小学校として創設したるが濫觴にして、爾来逐年校勢隆興せる結果千八百八十八年に至り大学制度に組織を変更し以て現在に及べる古い歴史を有し、多数の学生を収容するのみならず、外人教師の数二十有余名に達し居る等純米国式学校と見做し得るものなればなり。

 而して此不詳事変突発の因たるや、山東問題に対する支那の勝手気儘なる主張が貫徹せざりしに基くものならんも此は表面にして、其内実は窃かに好機到来を待望し居たる排日派と今後支那に於ける我国の勢力の駆逐を企図し居る米人等が、山東問題に名を藉りて一斉蹶起せるものと見るを至当とすべく、而も彼等は相当の知識を有するを以て在支邦人は勿論我公使館員らに一指だも触れなば忽ち国交問題を惹起するを憚り、平素親日派と認め居る曹交通総長、章駐日公使、陸前駐日公使等に先ず危害を加えたるものなるべきが、然も其勢の激する処、或は我公使館等に対し暴挙に出づるやも計り難く、然る時には我北京駐屯軍一中隊は武力正当防衛の已む無きに至るは必然ならん。尚一度北京に暴動の烽火打揚げられたる以上、附和雷同性に富める支那人の常として、山東、天津、上海等米人が比較的勢力を有する地に波及し至る処騒擾の巷と化さしむべく、殊に山東の如きは去月中旬済南に於て国会議員王訥を枢軸とせる山東問題国民大会開会され各戸軒頭に国旗を掲げて応援を与え、断じて日本に利権を与うる勿れと決議したる程なれば直接関係ある地方にてもあり、一層白熱的状況を呈するやも知れず。然りと雖も是等は素より深き根柢を有する者に非ざれば、仮令一時乱麻の状態に陥る共、幾許も無く支那政府に依り鎮圧静穏に帰すべしと観測さるるが、此事変に鑑みても我国の今後に於る対支政策の困難なるを忖度し得べく、国民は須らく政府の措置を厳重監督する要あるべし(某支那通談)。

大正8年5月7日 報知新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交23巻-30

 上記記事に書かれている通り、この動きは北京からアメリカ人の多い地域に広がっていった。

大正8年6月16日 大阪朝日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交23巻-57

 上の画像は五月十六日の大阪朝日新聞の記事だが、天津でも外国人宣教師等が学生を指揮していたことが目撃されている。

 北京大学生の来津誘惑、天津北洋大学生(米人経営)の共鳴演説と某国人の暗中煽動とは、漸次一般学生の言動に強烈なる色彩を加え来り。遂に北京に客死せる一学生郭光田の追悼会に名を藉り、支那青年会館、成美学堂、新学書院(何れも基督教会学校)等の生徒集会し、郭の死因を敷したる慷慨演説をなして排日気分を唆りたる結果、十二日に至り北洋大学、第一中学、第一師範、法政学堂、水産学校、女子師範、新学書院成美学堂其他五学校の学生等約五千は午後一時より河北公園内に於て郭の大追悼会をなしたる後、一団は同公園内に於て慷慨悲憤の演説をなし、一団は排日的の過激なる字句を認めたる旗を押立て市中を練歩き、或は三々五々大道に立ち路上演説を行う等不穏の挙動を演ずるに至れり。此騒動中成美学堂生徒は左腕に日貨排斥と書せる白布を結び、其近くに三名の宣教師等指揮し、外人の参加し居たるは吾人の目に異様の感触を与えたり。

大正8年6月16日 大阪朝日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交23巻-57

 各紙で外国人宣教師が排日活動を指導していたとの報道がなされているのだが、当時朝鮮半島でも排日運動が起きていた。そこでも「某国宣教師」が動いていたことが、多くの新聞で報じられている。

大正8年4月27日 大阪毎日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交巻-50

 上の画像は四月二十七日の大阪毎日新聞の記事だが、アメリカの宣教師は朝鮮でも同様のことをやっていたようだ。

 朝鮮暴動の背後に米国宣教師の暗中飛躍があったことは隠れもない事実である。此結果彼等は内外の信用を失墜し、啻に朝鮮のみならず、世界の各布教地に於て其行動を束縛せられ、地方人の疑いを蒙り、布教上に大支障を来し、延いて米本国に於ける宗教団体の権威までも疑わるることとなったので、背に腹は代えられず、終に虚構の事実を報道して、東洋の事情に暗き米国民を欺き、日本の朝鮮統治を讒誣中傷して、弱小国民に対する米人の同情心を唆り、国威を楯に着て、日本政府の政策を動かし、以て自己の罪跡を糊塗せんとするに至り此種の運動今や漸く米国内に顕著なるものがある。
 朝鮮事変勃発以来、東洋殊に支那各地よりの電報は、或は日本官憲の米国領事逮捕説、外国宣教師邸宅捜索説等を伝え、又日本軍が無辜の良民を虐殺したなどと、まことしやかに報道して居るが、此等の電報が、例の排日新聞のみならず、一流の新聞紙上にまで掲載されたので、頗る米国市民を驚かした。其出処の何れに在るかは別として、当地に於ける朝鮮人も目下当もない独立運動に躍起となって居る

大正8年4月27日 大阪毎日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交巻-50

アメリカ人は中国各地に多くの大学や学校を経営していた

大正9年4月26日 大正日日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交24巻-126

 アメリカが中国人に対して強い影響力を行使できたのは、多くの学校経営に関与していたことが大きかったのだが、大正九年(一九二〇年)四月二十六日の大正日日新聞の記事に、アメリカ人が関与していた学校の数や宣教師の数が明記されている。その数の大きさに驚かない人はいないであろう。

 支那に於て外人で学校経営に従事して居るものは米人を以て首位とする。又教会を営み伝導事業に従事するものも米人を以て最とする。
 最近の統計によるも米人の支那各地に経営せる学校は、大学以下百八十三校である、。又米人宣教師も男女を合せて二千二百三十四名に上って居る。是れ丈けの機関を備えて宣伝事業に当るからには其の効果の著しきこと推して知るべしである
 又一方に於て、米国は支那に於て頗る有力なる通信機関を備えて居る、北京上海は勿論其他の都市に至る迄、新聞及通信事業に於て甚だ有力なるものを持って居る。上海に於ける新聞及北京に於ける中美通信の如きは其の最も有力なる宣伝を為しつつあるものである。
 是等教育伝導及び通信機関が、互に気脈を通じ排日宣伝に従事することあらんか我国にとりて恐るべき結果を生ずべきは云わずして明かであろう。吾人は是等の機関が悉く排日宣伝に従事したりとは断言しない。又其の排日宣伝を援助するものも、必ずしも米本国の内命によりて之を行いしとは思わない。併し乍ら吾人が支那の各地に於て見聞する所によれば、是等の事業に携わる米国人にして、実際排日宣伝に従事し、若しくは之を援助するもの余りに多く、其の或は米国政府の方針が、殊更に日支両国を離間し、東洋の平和を攪乱し、其れによりて漁夫の利を占むるの魂胆に出でしにはあらずやと疑えば疑われぬにあらざるを惜むものである

大正9年4月26日 大正日日新聞 神戸大学新聞記事文庫 外交24巻-126

 アメリカはこれだけ多くの学校を経営していただけでなく、有力な報道機関も保有していた。彼らからすれば、中国人に排日に仕向けて日中を分断させ、いずれ日本人が開拓してきた中国の商圏を奪い取っていくための準備は、早い段階で完了していたのである。

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