GHQが焚書した『真珠湾』を読む2 真珠湾攻撃とロバーツ委員会報告

ハワイ

真珠湾攻撃

 アメリカ人のブレーク・クラークが書いた『真珠湾』の続きだが、前回は日本軍が真珠湾の周囲にある飛行場や海兵隊基地を空爆した場面を紹介させていただいた。

発艦直前の翔鶴の飛行甲板 Wikipediaより

 今回は、アメリカ最大の海軍基地であり、多くの戦艦、巡洋艦、駆逐艦等あらゆる型の軍艦がが碇泊していた真珠湾を日本軍が攻撃した場面をいくつか紹介させていただく。

 いずこからともなく姿をあらわした一群の雷撃機が、ホノルルの方角から突入してきたと見る間に、真珠湾の静かな海面に、低く、すばらしい速度で迫ってきた。軍艦に近づくと、かれらは、一段と高度を下げ、まず猛然と魚雷をぶッ放した。魚雷は、陽光に白魚のように輝き、水煙を立てて水中に沒入した。
 雷撃機というものは、 その目標に近づくときの樣子で、 すぐにそれと判別の出来るものである。すなわち彼は、一定の角度で下降してくると、目標の上で急に上昇しながら、できるだけ目標の近くに魚雷を放ってゆく。日本の雷撃機は、二つの大編隊にわかれて襲いかかってきた。各機は、注意ぶかく、 あらかじめ艦別に目標を選んでやって来たものにちがいない。なぜなら、日本機は、軍艦に迫るや、さっと編隊を解き、各自受持ちの艦に殺到して行つたので判ることである。

 ある主力艦の檣上で見張りをしていた一水兵は、よごれた芥子色の日本機が、その艦の舷側と直角にとびかかって来るのを見た。ついで、大きな鮫のように、 尾に鰭をつけた魚雷が、 はげしく水煙を立てて、 海中に突入する瞬間を見た。 日本機は、 魚雷を放つがいなや、 ぐいと上げ舵をとり、軍艦の甲板すれすれに飛び去った。水兵は、とっさの出来事に、どぎもを抜かれ、 魚雷の航跡が、 彼の乗っている主力艦めがけで、 まっしぐらに進んでくるのを、 茫然と眺めていた。 巨大な主力艦は、 いきなり物凄い拳骨の一撃でもくらったように、 一大轟音と共にゆらゆらと搖れた。 それとほとんど同時に、おびただしい重油が、軍艦のあちこちから噴出しはじめた。やがて、それらの重油は、火を発してめらめらと燃え出し、まるで石油タンクに延焼したときのように、たった二分間で、艦の上甲板は、完全に焔につつまれてしまった

 やがて焔は、 檣上で見張りをしていた例の水兵のそばまで、のびてきた。重い油くさい煙のなかに、彼は、まき込まれた。 ちょうど燃えさかっている煙突の口へ 首を突込んだようなものだった。怖るべき高熱、猛煙、爆発によるガス、これらのものが水兵の視力を奪い、彼の呼吸を困難にした。彼は見張所のなかにぶっ倒れ、両手で顏を蔽った。火傷をしたもの、負傷をしたものの呻き声が、下のほうから聞えてきた。彼は起きあがって下の樣子を見ようとしたが、灰と焔にさまたげられて、何も見ることが出来なかった。…
ブレーク・クラーク著『真珠湾』鱒書房 昭和18年刊 p.91-94

 この水兵は手さぐりで檣の下端までたどりつき、油で燃えている海に飛び込み、 出来るだけ水中に潜って一生懸命に泳ぎ、すぐ近くのフォード島までどうにか辿りついたが、髮の毛は全部焼け焦げてしまっていたと記されている。

 あらゆる戦艦、あらゆる巡洋艦の甲板から、舷窓から何千という将兵が海中に飛び込み海岸に泳ぎ着こうとしたが、中には溺れたり、艦内に閉じ込められて命を失った者もいた。同上書には、軍艦の名前が記されていない記録が少なくないのだが、被害が公開されていたオクラホマ、ユタ、アリゾナ以外の艦名は軍の機密に属するので書けない事情があるという。しかしながら沈没したアリゾナに対する爆撃については「もっとも凄まじい爆撃」として次のように記されている。

 おそらく、もっともすさまじい爆撃は、アリゾナ轟沈のときであったろう。このおだやかなオアフ島においては、数世紀前、今は死火山となっているバンチボールとダイヤモンド・ヘッド両火山が爆発して以来のものすごい爆裂音であったにちがいない。雷撃機のはるか上空を飛んでいた爆撃機が、一万フィート乃至一万二千フィートの高度から、湾内にいならぶ艦列をめがけて、ばらばらと爆弾の雨を降らした。この日本製の爆弾は、おそろしい重量のため、爆発しない前に、鋼鉄甲板の二つ三つを、あっさりとぶち抜いてしまった。 他の一弾は、 するりと、 うまい工合に煙突をくぐって、あっという間に、前部の火薬庫を、空高く吹きあげた。この爆撃に加うるに、間髪を入れぬ魚雷の来襲があった。

 艦の前部は、 一大音響と共に瞬時にして爆砕され、 艦の後部は、 ばらばらに解体するのではあるまいかと思われるほど、 はげしく震動した。 前部甲板は、 上下にものすごく搖れた。 砲塔は空中に吹っとび、 吹っとんだかと思うと、すさまじい勢で落下してきた。火焔と煙とが、甲板のあらゆる合せ目から噴出しはじめた。
 おそるべき爆発と、それに伴う驚天動地の大轟音――つづいて、異樣な大音響が、あらゆる人々の耳をつんざいた。もっとも、他の艦の乗員や海岸にいた数千の人たちには、その音響が何を意味するものであるか、すぐにわかった。それは日本機によつて海底に沈められた軍艦の最期の叫びであつたのだ。

 こうなると、艦内の人間こそ、あわれというべきであらう。身体は、文句なく二、 三百フィートの上空へ噴きあげられた。 砲塔には、 士官と水兵とが二十人ほどいたのであるが、それが一瞬にして砲塔もろとも吹っ飛ばされてしまった。 その大爆発と同時に、 すべての燈火は消え去り、 艦內は、暗黒の闇と化した。耳の鼓膜に一種の圧力が迫ってきた。むかつくようなガスと煙で、 いまにも窒息しそうだった。 艦外との連絡は、 すべて絕たれてしまった。 どの電信機を耳に当ててみても手応えはない。
同上書 p.100-103

 日本軍は重くて硬い弾頭を持った爆弾を装備させた爆撃機に三千メートル以上の上空から急降下させて戦艦に接近して爆弾を投下する攻撃方法で、軍艦の分厚い装甲板を突き破っていったのである。

リメンバー・パール・ハーバー!

雷撃を受け着底する戦艦カリフォルニア Wikipediaより

 それまでアメリカは日本という国を嘗めてかかっていたのだが、真珠湾攻撃で大惨敗すると、「忘るな真珠湾!(リメンバー・パール・ハーバー)」という造語で、アメリカ国民の士気を対日抗戦の方向に向けようとすることになる。
 しかしながら、日本軍が勇敢であり強かったことは彼らも認めざるを得なかったようである。

 真珠湾に對する日本軍の大胆不敵なる攻撃は、まさしく世界的な意義を有するものである。まず第一に、それは、枢軸国*の実力について、われわれに、新しい概念をあたえてくれた。われわれは、日本人は独創力と想像力に欠けている――わずかに能力ありとすれば、 それは単に模倣性にしかすぎぬといったような根も葉もない話ばかり今までにきかされてきた。もしそれが真実であるとするならば、 日本海軍の軍艦は、 荒天に乗り出すやいなや、 ただちに一隻のこらず顚覆していなければならぬ筈である。
*枢軸国:日本、ドイツ、イタリア
 いまや、われわれは、かかる楽観主義的な見解を一擲しなければならぬことを学んだのである。

 かつて、いかなる国家にあたえられたこともないような、攻撃作戦を計画し実行した日本海軍軍令部を、いかにわれわれが憎むにしても、われわれは、 このおかえしを、 そっくりそのまま、 かれらに返上してやらなければならぬ。日本軍のこのだまし討ちは、平和な国家に対するヒットラーの電撃作戦をすらも、しりえに瞠若どうじゃくたらしめるものである。ヒットラーと同樣、緒戦の一撃だけは、確かにかれらも成功した。もし、その倫理性をさえ問題にしないならば、日本軍の攻撃ぶりの想像を絶した勇敢さだけは――敢て称賛するとは言はざるまでも――われわれといえども認めざるを得ない。わづか○時間と○○分という短時間のあいだに、日本海軍とその航空部隊とは、一挙に不可能を可能にしたのである。

 われわれハワイに住むものは
「いったい、どうしてそんなことが可能であったのか?」
と、 ただただ驚き唖然とするのみである。だがわれわれは、この問題に、いたずらに恋々とかかづらってはいなかった。 われわれは無益な想像をおさえて、 ただロバーツ調査委員会の報告を待っていたのである。その報告が、他のいかなることを明かにしたところで、 それは、 日本のながい間の、 練りに練った作戦計画に対する、絶対動かざる証拠をあたえたことに変わりはない
同上書 p.174-176

 「ロバーツ調査委員会の報告」とは、ルーズヴェルト大統領が真珠湾での敗戦原因調査を命じて作成させたレポートであり、本書の巻末に、訳者の解説とともに報告書全文が掲載されている。著者のクラークは、この報告が如何なることを明らかにしたにせよ、日本軍が「ながい間の、 練りに練った作戦計画」を成功させた事実は変わらないと述べており、日本軍の攻撃のレベルの高さを認めているのである。

ロバーツ調査委員会報告書

 ではロバーツ調査委員会報告書に何が書かれていたのか。この内容が戦後の日本人に広く知らされていたら、「真珠湾攻撃は日本の騙し討ち」などとする議論は成り立たないのではないか。アメリカの陸海軍は一九四一年十月十六日にハワイ陸軍区司令官や太平洋艦隊司令長官に対し日本が対米戦争に向かう可能性について警告し、準備に万全を期すべき旨訓令していた。

キンメル太平洋艦隊司令長官

 十一月二十四日には、海軍作戦部長はキンメル船隊司令長官に對してメッセージを送り、海軍省の見解として、 日本が比島あるひはグアム島をふくむいずれかの方面に対して奇襲攻擊を行う可能性がある旨を伝達している。その後も繰り返し訓令している。

 一九四一年十一月二十七日、 陸軍参謀総長はハワイ陸軍区司令官にあてて訓令を発し、
「日米交涉は、 ほとんど破局に終った。 もはや再開の望みはない。 したがって日本が今後いつ積極的行動に出てくるか予断を許さぬが、いまやその行動を起す瞬間に逢着したことは確かである。戦争が避けられない場合には、ハワイ陸軍区司令官は、ハワイの防衞を安全ならしめるためには、いかなる行動の制限をも受けるものではない」
旨を通告
した。
 なおこのメッセージは戦闘行為が開始される以前においても、陸軍区司令官が必要と認める場合には、偵察その他の方法をとり得ること、ただしこれが実施に当っては、住民を驚かしたり気づかれたりすることのなきよう十分の注意を払うべきことを命じている。また陸軍区司令官は、このメッセージ中の情報は、一部幹部将校のみにかぎり伝達すべきこと、実施された措置については直ちに参謀総長に報告すべきことを命ぜられている。
 右メッセージの内容要旨は、陸軍区司令官より太平洋艦隊司令長官に通告された。

 同日(一九四一年十一月二十七日)陸軍諜報部長は、ハワイ陸軍司令官麾下の諜報官にあてて、おなじくメッセージを送り、「日米交渉は事実上決裂した。つづいて日米は戦争行為にはいるかも知れぬ。なんらかの破壊的行為が予想される故、この旨、陸軍区司令官および参観総長に上申警告すべきこと」を通牒した。

 同日(一九四一年十一月二十七日)海軍作戦部長は、太平洋艦隊司令長官にあててメッセージを送り、「このメッセージは戦争の警告と考えらるべきこと、太平洋の安定を得んとする日米交渉は終りを告げたこと、数日中に日本は戦争行動に入るだろうこと、日本陸軍の臨戦態勢と日本海軍部隊の動向等により、日本軍のフィリッピン、タイ、マライ半島、ボルネオ等に対する水陸両面の進攻作戦が予想されること」につき警告するところがあつた。 戦争任務を遂行するための準備は置くとして、防衛態勢を速かに整えることを命じた。なお、このメッセージにおいては、さらにグァム、サモアおよび北米大陸地區におけるサボタージュ防止につき適当なる措置をとるべきことを出示し、同樣の警告が陸軍省からも発せられようとしている事実をも附記した。また、太平洋艦隊三令長官は、 海軍軍管区および現地陸軍当局に伝達するよう命ぜられた。
 かくて、同司令長官は、この訓令にもとづき、右メッセージの要旨を、ハワイ陸軍区司令官に通牒した。
 本委員会に於ける査問会の席上、ハワイ陸軍区司令官ショート中將は、上記メッセージにつて、「見せられたような気もするが、たしかな記憶はない」と陳述している。…
同上書 p.210-212

ショートハワイ陸軍区司令長官

 その後も何度も警告や訓令が行われたのだが、キンメル太平洋艦隊司令長官、ショートハワイ陸軍区司令長官も然るべき戦争準備を怠ったのである。委員会報告にはつぎのように書かれている。 

 にもかかわらず。これらの両責任長官ならびにその幕僚は、例外なしに一つの確信を固持し、それを一九四一年十二月七日まで頑固に信じていたのである。それは、「日本は、かかる奇襲の意図を全然もっていない」という確信であつた。さればこそ、かかる方法による日本の攻撃が、ハワイ地区に駐屯していた陸海軍の高級將校のすべてにとって、完全なる不意討ちとなったのである。

 この攻撃に先立つ数週間も以前から、陸海両長官は、しばしば中央からのメッセージを接受し、注意を促されていた。このメッセージには、警告と命令とが含まれていた。それにもかかはらず、両長官は、依然として上記の確信を棄てなかつたのである。

 十月十六日には、はやくも両長官は、日米戦争が起るかも知れぬとの警告を受け、このメッセージにかんがみ即座に警戒を開始し準備的措置を行うべき旨指示されている。 越えて十一月二十四日には、意味深長な重大な警告的通牒が送られているし、ついで十一月二十七日には、戦争は一触即発のところまで迫っているとの警告が彼等に向って発せられている。この警告は、戦争を、しかしてただ戦争のみを指示していたのである。
 これらのメッセージのうち、 二つは命令を含むものであった。陸軍区司令官は、彼が必要と考える偵察その他の諸措置をとるべきことを命ぜられた。また艦隊司令長官は、戦闘準備として防御的展開を行うべきことを命ぜられた
 つづいて、他の重要なメッセージが、両長官に對して、続々と発せられた。これらのメッセージは、いずれも、危機の切迫と戦争準備の必要とを強調したものである。

 このような情勢下において、両責任長官は、日本の攻撃に先立つ十日間というもの、彼等が接受した警告、命令の意味していることについて全然協議せず、またその接受せる命令に従って当然とらなければならぬ防衛措置に関しても、全然協力しなかった。通達の結果とられた各種の措置は、いずれも両長官によって個々別々に行われたにすぎない。両長官とも、たがいに、他方の長官が、どのような措置や配備をしているかについて、全然関知するところがなかった。
 かくのごとくにしてなされた準備措置は、空からの奇襲に対しては、あまりにも不適当であった。
同上書 p.233-235

 非常事態であることの緊張感のないまま、十二月七日(日本時間十二月八日)の朝を迎えたのだがこの日は日曜日であり、前日の土曜日の夜は多くの兵士たちは許可を得てホノルルの町で過ごしていたという。真珠湾で敗れたのは決して日本軍が騙し討ちだとするのは、実態はアメリカの醜態を隠すためのプロパガンダであったと理解すべきなのである。

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