GHQの定めた検閲指針がわが国のマスコミなどで今も実質的に守られている理由

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GHQが削除または掲載発行禁止とした指針

 GHQ(連合国軍総司令部)は、わが国に宛てた『日本新聞遵則(日本出版法・Press Code for Japan)』以外に、もう少し詳細な検閲指針を定めていた。

江藤 淳

 江藤淳氏は、昭和五十四年(1979年)の秋から約半年間、ワシントンにあるウィルソン研究所やメリーランド大学、スートランドの国立公文書館分室に通い詰めてGHQの検閲に関する資料を調べ、『閉ざされた言語空間~~占領軍の検閲と戦後日本』という本に纏められておられる。この本の中で、GHQの検閲指針が定められた1946年11月25日付の公文書(A Brief Explanation of the Categories of Deletions and Suppressions, dated 25 November,1946資料番号RG331,Box No.8568)を探しあてて著書の中で邦訳されている。

削除または掲載発行禁止の対象となるもの

(1)SCAP(連合国軍最高司令官もしくは総司令部)に対する批判

 連合国最高司令官(司令部)に対するいかなる一般的批判、および以下に特定されていない連合国最高司令官(司令部)指揮下の如何なる部署に対する批判もこの範疇に属する。

(2)極東国際軍事裁判批判

 極東軍事裁判に対する一切の一般的批判、または軍事裁判に関係のある人物もしくは事項に関する特定の批判がこれに相当する。

(3)SCAPが憲法を起草したことに対する批判

 日本の新憲法起草に当ってSCAPが果たした役割りについての一切の言及、あるいは憲法起草に当ってSCAPが果たした役割に対する一切の批判。

(4)検閲制度への言及

 出版、映画、新聞、雑誌の検閲が行われていることに関する直接間接の言及がこれに相当する。

(5)合衆国に対する批判

 合衆国に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(6)ロシアに対する批判

 ソ連邦に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(7)英国に対する批判

 英国に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(8)朝鮮人に対する批判

 朝鮮人に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(9)中国に対する批判

 中国に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(10)他の連合国に対する批判

 他の連合国に対する直接間接の一切の批判がこれに該当する。

(11)連合国一般に対する批判

 国を特定せず、連合国一般に対して行われた批判がこれに該当する。

(12)満州における日本人取扱についての批判

 満州における日本人取扱について特に言及したものがこれに相当する。これらはソ連および中国に対する批判の項には含めない。

(13)連合国の戦前の政策に対する批判

 一国あるいは複数の連合国の戦前の政策に対して行われた一切の批判がこれに相当する。これに相当する批判は、特定の国に対する批判の項目には含まれない。

(14)第三次世界大戦への言及

 第三次世界大戦の問題に関する文章について行われた削除は、特定の国に対する批判の項目ではなく、この項目で扱う。

(15)ソ連対西側諸国の「冷戦」に関する言及

 西側諸国とソ連との間に存在する状況についての論評がこれに相当する。ソ連および特定の西側の国に対する批判の項目には含めない。

(16)戦争擁護の宣伝

 日本の戦争遂行および戦争中における行為を擁護する直接間接の一切の宣伝がこれに相当する。

(17)神国日本の宣伝

 日本国を神聖視し、天皇の神格性を主張する直接間接の宣伝がこれに相当する。

(18)軍国主義の宣伝

 「戦争擁護」の宣伝には含まれない、厳密な意味での軍国主義の一切の宣伝をいう。

(19)ナショナリズムの宣伝

 厳密な意味での国家主義の一切の宣伝がこれに該当する。ただし戦争擁護、神国日本その他の宣伝はこれに含めない。

(20)大東亜共栄圏の宣伝

 大東亜共栄圏に関する宣伝のみこれに該当し、軍国主義、神国日本、その他の宣伝はこれに含めない。

(21)その他の宣伝

 以上特記した以外のあらゆる宣伝がこれに該当する。

(22)戦争犯罪人の正当化および擁護

 戦争犯罪人の一切の正当化および擁護がこれに相当する。ただし軍国主義の批判はこれに含めない。

(23)占領軍兵士と日本女性との交渉

 厳密な意味で日本女性との交渉を取り扱うストーリーがこれに該当する。合衆国批判には含めない。

(24)闇市の状況

 闇市の状況についての言及がこれに該当する。

(25)占領軍軍隊に対する批判

 占領軍軍隊に対する批判がこれに該当する。したがって特定の国に対する批判には含めない。

(26)飢餓の誇張

 日本における飢餓を誇張した記事がこれに該当する。

(27)暴力と不穏の行動の煽動

 この種の記事がこれに該当する。

(28)虚偽の報道

 明白な虚偽の報道がこれに相当する。

(29)SCAPまたは地方軍政部に対する不適切な言及

(30)解禁されていない報道の公表

(文春文庫『閉ざされた言語空間~~占領軍の検閲と戦後日本』p.237~241)

なぜGHQの検閲で中国・朝鮮に関する批判が削除・出版禁止対象とされたのか

 GHQが定めた上記30項目を、私なりに大まかに分類してみた。

①東京裁判への批判  (2)

②GHQが日本国憲法起草について関与したことに対する批判  (3)

③連合国(戦勝国)に対する批判 (5)~(7)(10)~(13)

④戦意の昂揚につながる宣伝 (14)~(22)

⑤占領時代の混乱拡大につながる記事 (1)(4)(23)~(30)

⑥中国、朝鮮人に関する批判 (8)(9)

 昭和27年(1952年)にGHQが解体されて68年にもなるのに、検閲制度が今も実質的に維持されているのではないかと思うことがよくあるのは私ばかりではないだろう。

 上記の30項目の中で、(8)(9)の二項目(中国・朝鮮人に関する批判禁止)に注目したい

 戦時中連合国の一員であった中華民国は、1949年に国共内戦で中華人民共和国に敗れて大陸地区から放逐され、実質的に消滅してしまった。また朝鮮は日本との併合により枢軸国側に分類されるのだが、終戦当時において連合国は、大韓民国臨時政府からの政府承認の要請を否定して朝鮮全土を連合国軍の占領下に置いた。その後1948年に米軍統治下にあった南朝鮮のみで独立し「大韓民国」となった経緯にあるのだが、このような経緯からすると、 (8)(9)は30項目の中で異質な存在であることがわかる。

 では、なぜGHQは、中国と朝鮮人に対する批判を削除または掲載発行禁止の対象としたのであろうか。異論はいろいろあると思うが、私の考えは以下のとおりである。

 GHQは占領期間中に、連合国にとって都合の悪い歴史を日本人に読めないようにした上で、 戦勝国の犯罪を不問に付し日本を悪者にする、 連合国軍にとって都合の良い歴史観(自虐史観)を描いてわが国に押し付けたのだが、わが国との平和条約が発効される日が来れば、いずれ占領軍は撤退することになる。しかしながらGHQとしては、撤退した後も日本人の歴史観が連合国にとって望ましいものでありつづけることを願っていた。占領軍が検閲指針に(8)(9)を入れたのは、そのことを考慮した上で加えられたものではないだろうか

 すなわち、(8)(9)を追加しておけばGHQが撤退した後も、日本のマスコミなどは中韓両国が圧力をかけることを恐れて、中国や韓国・朝鮮人に対する批判を自粛するようになる。そのために、中韓両国が何をやっても日本国内ではそれを批判する世論が主流とならず、世論の後押しがないために政治家も沈黙せざるを得なくなる。中韓はやりたい放題・言いたい放題が続き、マスコミは中韓に寄り添おうとし、問題が拡大すればわが国は何度もカネを払って解決せざるを得なかった。

昨年8月の日本大使館前のデモ( ソウル ) …産経新聞より

 言い方を変えると、戦勝国にとっては反日国家である中華人民共和国と南北朝鮮を泳がすことによって、わが国が歴史観を変更しようとする動きを阻止することができる。自らは日本に言論弾圧などの圧力をかける必要はなく、日中韓の動きを黙ってみているだけで戦勝国にとって都合の良い歴史観が、日本人だけでなく世界的に固定化されていくことになる。戦勝国にとっては、その状態が続く限り先の大戦における戦争責任を問われることがないので、安泰なのである。

 ついでに言うと、戦勝国にとっては日本が復興して再び経済強国となることは好ましいことではないはずである。そうならないためにGHQは日中・日韓間に対立の種を残しておき、何度も日本の富を吐き出させる仕組みを作っておくことが望ましいといった考え方も背景にあったのかも知れない。

公職追放の影響

 しかしながら、わが国の政治家や官僚やマスコミ関係者は、なぜ中韓など外国の圧力に容易に屈してしまうのであろうか。気骨のある人材が少ないのはなぜかと誰でも思う。このようになってしまったのはGHQによる公職追放の影響を指摘せざるを得ない。

 ポツダム宣言の第六項には「日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を永久に除去する。無責任な軍国主義が世界から駆逐されるまでは、平和と安全と正義の新秩序も現れ得ないからである。」と書いてある。昭和20年(1945年)9月にアメリカ政府が発表した「降伏後におけるアメリカの初期対日方針」には、「軍国主義的又は極端な国家主義的指導者の追放」が規定されていた。

  その方針に基づき、昭和21年(1946年)からGHQによる公職追放がはじまり、20万人以上が職場を追われたという。追放されたのは「軍国主義的又は極端な国家主義的指導者」だけでなく、政財界の重鎮や各界の保守層の有力者が軒並み排除され、それらのポストは労働組合員などいわゆる「左派」勢力や共産主義のシンパで埋められて主導権を握ることとなったのである 。

 その後労働運動が激化し、さらに大陸では国共内戦や朝鮮戦争で共産主義勢力が伸長したために途中でGHQの占領政策が変更され、過去に公職追放された人物が職場復帰したり、新たに共産主義者が追放されたりしたのだが、マスコミ・出版社、教育関係者、公務員、政治家などの分野に関しては「左派」勢力が強い状況が長く続き、今も同様な状況が続いていると理解している。

GHQが定めた検閲指針を今もマスコミなどが固守しようとする背景

 どこかの新聞社が虚報を流して世論を焚きつけたあと、中韓のいずれかが大騒ぎし、政治家が動いてカネで決着するようなことがこれまで何度あったかわからない。

 GHQが解体されてから68年にも経つのに、いまだにマスコミでGHQが定めた検閲指針が実質的に継続している原因は、GHQが中国・朝鮮に対する批判を「削除または掲載発行禁止」項目に織り込んだことと、公職追放のあとマスコミに「左派」勢力が幅を利かしたことの両方が効いている。中韓からことある毎に『歴史問題』をカードにされればマスコミはそれに同調し、日本国民の多くが歴史について思考停止に陥って、結果として自虐史観がこんなに長く続くことになってしまった。

 ところで、わが国の「左派」勢力が自虐史観を固守し続けてきた理由はどこにあるのであろうか。この点については最近の欧米における近現代史の研究成果がヒントになる。

 第二次大戦前後にアメリカ国内に多数いたソ連のスパイやエージェントがモスクワの諜報本部と交わした極秘通信をアメリカ陸軍省特殊情報部が傍受した記録が残されていて、1946年以降に解読に成功した文書を『ヴェノナ文書』と呼んでいるが、近年この研究が進んで、日米の政権や軍部や官僚、マスコミなどの中枢部にソ連のスパイやエージェントが多数暗躍していたことが判明し、日米戦争を惹き起こしたのは、先進国同士を戦わせて共産主義革命に導こうとするソ連の工作によるものであることが実証的に明らかにされつつある。興味のある方は江崎道朗氏の次の著作などをお勧めしておきたい。

 そのような真実が広く知られるようになると自虐史観は根底から崩れて、戦争の原因を作ったのはソ連の仕掛けた「敗戦革命工作」に協力した世界の人々ということになってくる。

 そうなって困るのは、反日の中国や韓国、世界の「左派」勢力ということになることは誰でもわかる。わが国のマスコミや教育関係者などが、いまだにGHQの定めた検閲指針を墨守し、新しい実証的な歴史研究を「歴史修正主義」と決めつけて自虐史観を固守しようとしている理由は、そのあたりにあるのではないかと考えている。

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 ブログ活動10年目の節目に当たり、前ブログ(『しばやんの日々』)で書き溜めてきたテーマをもとに、昨年(2019年)の4月に初めての著書である『大航海時代にわが国が西洋の植民地にならなかったのはなぜか』を出版しています。
 通説ではほとんど無視されていますが、キリスト教伝来以降ポルトガルやスペインがわが国を植民地にする意志を持っていたことは当時の記録を読めば明らかです。キリスト教が広められるとともに多くの寺や神社が破壊され、多くの日本人が海外に奴隷に売られ、長崎などの日本の領土がイエズス会などに奪われていったのですが、当時の為政者たちはいかにして西洋の侵略からわが国を守ろうとしたのかという視点で、鉄砲伝来から鎖国に至るまでの約100年の歴史をまとめた内容になっています。
 読んで頂ければ通説が何を隠そうとしているのかがお分かりになると思います。興味のある方は是非ご一読ください。

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