以前このブログで、「国立国会図書館デジタルコレクション」で「個人向けデジタル化資料送信サービス」の手続きをすることにより、GHQ焚書の大半が自宅のPCなどで読めるようになったことを書いたが、このサービスの手続きをすることで閲覧できるようになったGHQ焚書のなかから、読者の皆さんにとって興味深いと思っていただけそうな本を今後紹介させて頂きたいと考えている。
今回は昭和六年に先進社から刊行された大泉忠敬『支那新聞排日ぶり』という本を採り上げることにしたが、お隣中国の排日・抗日状況については戦前戦中に多くの本が刊行されており、少なからずの作品がGHQで焚書処分されている。
編著者の大泉忠敬については、東京日日新聞社経済部長の杉山幹が記したこの本の序文に「第一外国語学校教授たる大泉君、若き支那研究科である」と書かれているのだが、「近代文献人名辞典」で調べても「生没年不詳」と著書にこの本が記されているだけで、ネットではほとんど情報がない。ただ、『東京外國語學校支那旅行報告. 昭和四年度』(昭和五年刊)という本に、当時「支那語部文化三年」であった本人の「支那旅行日記」が掲載されていることが確認できるので、『支那新聞排日ぶり』は、大泉が東京外語学校を卒業して研究生活に入ったばかりの頃に上梓した本であることが推測できる。
著者の序文
最初に編著者の序文を紹介しておきたい。序文の日付は昭和六年(1931年)十月十五日で、満州事変の発端となった柳条溝事件(九月十八日)から一ヶ月も経っていない。
元来、支那と言う国は宣伝、逆宣伝に巧みな国である。いわんや内外信用を殆んど失った国民党政府が、三民主義の大看板と、打倒帝国主義とあらゆる事件を摘んで、自党正義の宣伝、宣伝で、保っているというは、敢えて過言ではない。したがって国民党政府を背景とする支那紙のほとんど全部が、針小棒大は勿論のこと、時には黒を白と言っても、大デマを飛ばすことは日常茶飯事である。
今回、暴虐と言おうか、無智と言おうか、東北軍官兵の満鉄鉄道襲撃破壊に起因して満州事変が突発するや、一たび愕然として驚倒した支那は、忽ちその逆宣伝鬼振りを発揮し、内に外に大デマを飛ばして、日本を苦境に陥れんと起った。
吾が軍の満鉄線路破壊云々は、甚だしき捏造の言。
一退役軍人、累々たる借金に追われて、満州に放浪中失踪せる、中村大尉を利用して、中村大尉事件を捏ちあげ、吾が未曽有の洪水大災害、南京、広東対立、共匪の騒擾各所に起これる多端の機に乗じて、遂に暴日は侵略主義の獣性を暴露し、突如満洲に出動、北は長春、南営口より、さては青島に至るまで、数時間内に占領せり。数年来予定の計画、国際公法に違反し、東亜はもとより、世界の和平を乱す大暴挙である。
と最初の捏造記事を掲げたのにはじまり、日を追うて猛烈を加え、遂には堂々と、某外人消息、或いはロイター電報と称し、
米国、ロシア、自国権利、自国民用語と、正義の国支那に同情して派兵、あるいは暴日を膺懲せん。
と言い、一方、
奸悪、極獰の日本兵、浪人は各地に中国の建設物を破壊し、無辜の中国兵、農商民、男女老幼を問わず殺傷、強姦、掠奪を加えていたらざるなし。かくして多年我が中原を伺いし日本は、遂に我が国土を永久にその領となさん。瀋陽(奉天)はもはや我が領土に非ず、土肥原市長、永遠に日本領たることを布告す。国の亡ぶる日近し。一致団結して対日宣戦へ。永遠の経済絶交を以て、徹底的に、日本に抗せよ。
と排日思想を吹き込み、敵愾心を刺激し、日支関係を愈々悪化せしめるばかりである。…中略…
満洲事件開始以来のニ三新聞を通読して、私はどう感じどう考えたか。我々は表面に現れたまま受取って、拠かに狼狽する必要はない。皮肉な報道や、一斉に一致団結を叫ばねばならないことは、各界の叫び、全国民の世論と言われるものが、実のところ多くは支那の宣伝であることを推察し得るところである。がしかし、愈々猛烈を極め加速度的に進展する捏造報道、逆宣伝が、国民党党部の主宰する直接運動等と相俟って、外に向かっては、比較的事変ならびに支那の真想を知らぬ外国を誤解せしめ、その結果が堂々と主張して憚ることなき、吾が満蒙に於ける権益の確保を危うくしつつあることは、日々我が新聞紙の報ずるところによって知らるるとおりである。又、内に向かっては、真相を知らぬ一般人士に、少年に、児童に如何なる悪影響を及ぼしつつあるかを考える時、またその実際記事――投稿欄に表われた排日文――となって現れたのを見る時、殊に児童に対して抜くべからざる対日悪感情を刻み、日支関係を悪化せしめているのを知って、私は将来の日支関係を殊に深く憂慮させられるのである。今にしてこの陋劣、悪辣なる手段を以て、日本を泥沼に陥入れんと、夜も日も足らず力めている国民党政府に大鉄槌を加えねば、我が国が大いなる危淵に、やがて臨まねばならぬ日が来るであろう。
大泉忠敬著『支那新聞排日ぶり』先進社 昭和6年刊 p.3~7
満州事変については、発端となった柳条溝鉄道爆破が、支那軍によるものなのか関東軍の自作自演なのか、戦前と戦後の書物で真逆に描かれていることはこのブログでも書いたが、戦前では支那軍が爆破したというのが通説であった。これが関東軍の自作自演ということに書き換えられたのは、昭和三十年発行された雑誌『別冊 知性』の12月号に、元関東軍参謀の花谷正の名前で「満州事変はこうして計画された」という記事が掲載された ことが契機となっているのだが、この記事は 当時二十三歳であった東大生・秦郁彦が本名を伏して花谷の手記として発表したものである。
支那の新聞は満州事変を当初どう伝えたか
当初から支那は関東軍の自作自演を主張していて、その論拠に説得力があれば世界も厳しく日本を批難したはずなのだが、世界は支那側の主張を信用していなかったことは、国際連盟から派遣されたリットン調査団の報告書が支那軍が爆破したことを前提に書かれていることで明らかである。
関東軍の指導者であった板垣征四郎や石原莞爾らが物故したのちに、一東大生が本名を隠して「元関東軍参謀」の手記として書いた雑誌記事を根拠に歴史が書き換えられたことになるのだが、そもそも支那の新聞にはこの事件は当初どのように報じられていたのであろうか。大泉は支那の新聞記事を以下のように伝えている。
満洲事件突発後の最初の報道は、九月二十日の新聞紙殆んど全面に亘って、暴日、侵略、入冠、強占等の文字を埋め尽くして表わされた。その文字の大きさと言ったら、日本では、差し詰め富士山が爆発して駿河湾を埋めても、恐らくそんな大きな見出しを掲げないだろうと思われる程の文字である。まづ民国日報九月二十日の新聞を見ると、六段抜きで、一寸*四方位の字でこう書かれている。
*寸:30.3mm◇国際公法に違反し、東亜の平和を破壊す。日本軍、昨朝瀋陽(奉天)を強占。
自ら満鉄線路を毀ち、我が軍の所為なりと誣言し、之に藉口して血戦を啓く。
我軍無準備、無抵抗、瀋陽全城遂に陥落す。
日本軍、殺人、放火を恣(ほしいまま)にし、栄臻虜われ、王以哲難に殉ず。
長春、営口、遼陽等の要地、同日等しく守りを失えり。の大見出しの下に、張学良の電報による最初の大逆宣伝を飛ばしている。
(本社北京発電)張副指令の政府宛電報、
「只今、瀋陽より、臧主席、栄参謀長の電に接せり。その電に謂う。『日本兵、昨(十八日)夜十時より、突如我が北大営に攻撃を開始せり。我が軍は飽くまで無抵抗主義を採り、毫もこれに応ずるの挙に出でず。日本兵遂に営舎に放火して、之を焼き払い、我が兵を舎外に駆逐し、同時に野砲を用いて北大営は迫撃急にして、砲庫爆破さる。砲廠もまた強占せらる。死傷者数調査中。省域内外の警察各分所と同様射撃を受け、警官等いずれも駆逐せらる。無線電信発新書もすでに侵さる。我々は日本領事に対し、再三厳重なる談判をしたが、軍隊の皇道派外交官直接之を制止する能わずというのである。実に甚だしき欺瞞である。さらに言う。吾が軍(支那)の満鉄線路破壊に起因すとは甚だしき捏造なり。…中略…』。この後の消息絶えたるを以て情況不明なるも、日本側の宣伝、我が軍満鉄線路襲撃爆発せるに因り、日本軍進撃を開始せりとのことは、事実上我に於いては絶対に覚えない。即ち日本軍我が北大営を侵せる時もまた、毫末も抵抗せしことなし。国民政府に電告す。張学良」
と、満鉄線路襲撃事件を日本側の捏造なりとして葬り去り、全然無抵抗と通告して一領事館に、いち早くその捏造記事を通告したのである。
同上書 p.1~4
この様に当初から支那では関東軍の自作自演であると報じていたのだが、わが国の戦後の歴史叙述は当初支那の新聞で報じられた内容に近いものになっていることがわかる。雑誌『別冊 知性』12月号の論文が出るまでは、わが国では支那軍が爆破したものと伝えられていたのだが、嘘をついていたのはどちらなのか。
日本軍が青島、葫蘆島を占領した?
柳条溝事件以降の戦況を支那の新聞はどう伝えていたのかについて、前掲書にはこう記されている。
二日目、三日目になるに従い、報道はいよいよ出でていよいよ奇であり、益々挑煽的になり始め、文字国にあるべき凡ゆる痛罵の辞をわが国に冠すること、日々に猛烈を極め出したのである。
(九月二十一日民国日報)
日本軍横行警報絶えず(六段抜き)
南満州鉄道方面より転じて、京奉鉄道方面に向かいて進侵するの形勢。
葫蘆島(ころとう:遼寧省西部,遼東湾北西岸にある港湾都市)、連山湾、均しく占領せられ、青島に日本海軍上陸す。
吉林、延吉等の五県守りを失い、平吉(北平―吉林)間電報不通。瀋陽に飛行機示威を行い、家々門戸を閉ざし、路上行人極めて少なし。
(本社北平発電) 日軍海上より連山湾を占領す。
(同 南京発電) 日本軍すでに連山湾、葫蘆島を占領し、支那側の一切の建設物を破壊。軍隊は武装を解除せらる。人民は屠戮せられて、號哭の声惨として聞くに忍びず。
(同 北平発電) 某方面の青島より受けし電報によれば、日本海軍の陸戦隊は、十九日午後青島に上陸し、忽ちこれを占領したり。電信普通。未だ確報に接し得ず。いつの間にやら、青島を占領した記事を某方面の名で、捏ち上げてしまった。もちろん、数日の後、極めて僅かな文字で取り消してはいるが。…中略…
葫蘆島云々という記事が如何に捏造記事であるかは、同日大公報が長春なおも紛乱中、葫蘆島無事と報じている事でも判断することが出来る。以て民国日報がいわゆる支那新聞紙たるの真価を至る所に発揮していることを知ることが出来る。
同上書 p.8~11
そもそも柳条溝事件のあとで日本軍が青島や葫蘆島を占領した事実は存在しない。お隣の国の報道は今もそうだが、捏造報道は日常茶飯事である。この本には、支那の捏造報道がこれでもかというほど多数収録されているので、興味のある方は読んでいただければと思う。
国際連盟を利用する支那
満州事変勃発後まず「国際公法に違反し、東亜の和平を破壊し、暴日瀋陽を強占」と国内にデマを飛ばした支那は、ジュネーブの国際連盟にも誇大な電報を打ったという。
民国日報二十一日の記事にはこう記されている。
◇外交部日軍の暴行を通告す。
国際連盟及び不戦条約国に打電し、各国の有効措置を採るべきことを希望す。(本社南京発電) 外交部は二十日、連盟およびケロッグ条約締盟国に打電す。その内容の大略を述べれば、国際連盟規約第十五、十六条によれば、甲国が乙国を冒す場合には、平和を破壊し、国際間に危害を加えるものとみなし、その他の国は友好の処置を取るべしと、電文に所載する所は甚だ明瞭である。すなわち今回日本軍が暴力に依りて、東三省の要地を占領せり。東三省は明らかに支那領土である。この種の暴行は独り、日本の東亜の平和を破壊するに止まらず、国際上、世界の平和に影響するものである。支那は終始抵抗を加えず。よろしく公道を主持されんことを請うというのである。
また外交部がケロッグ不戦条約締盟国に打電して言うところは、不戦条約条文中に於いて、濫りに平和を破壊する者あるに於いては、締盟国は一致責を負いて正当なる解決を計るべしとの規約がある。日本軍のこの種の行為は、明らかに、この条約に違反するものにして、独り中華民国がその蹂躙を受けるに止まらず、公約また為に破棄せらるるものなり。宜しく公道を主持せられんことを請うというのである。と各国に訴えて、日本を完全に牽制した。その結果、日本が対外的、対連盟的に如何に苦境に陥らねばならなかったかは、すべての読者の知らるる通りである。
同じく民国日報二十一日の記事中に、
◇国際連盟日人の暴行に注目す。
日本代表一手を以て各国の耳目を掩(おお)わんとす。
我代表、日本が完全に責を負うべきを表示す。
行政理事会今日討論せん。
国際連盟、規約に照らして公道に終始せん。…中略…
(ロイターロンドン発電) ロイター社ジュネーブ発電によれば、十九日午後連盟理事会開催。日支代表各々瀋陽事件に関する言を発表。日代表芳澤は、新聞紙以外の消息無く、わずか一電に接したのみと語り、その電報に於いても、単に日支瀋陽に於いて衝突すとあるのみにて、詳細未だ到達せざれば、到着後理事会に通知すべし。また日政府は極力紛糾を避くべしと。支那代表施肇基(し ちょうき)の言うところは、彼この報に接し大いに驚駭せり。瀋陽事件は絶対支那側の求めて為したるものに非ずと、彼は各種の消息を理事会に通知せりと。
日本内閣の連盟に対する措置の遅れしことが、支那側をして内閣意見不一致、首相外相の両人は陸相を恨むと軽侮せしめ、一方ジュネーブに於いて、芳澤大使を孤軍の苦境に陥れたことを物語っている。…中略…
支那政府が外国に対し、堂々と自己の非法を否定し、暴日を誇張し、自己の対日無抵抗なるを説き、正義人道に訴えんと主張したことは、勿論外国をして日本を牽制せしめ、自国を有利な立場に誘導せんがためなのであるが、一方支那国民をして、国民党政府が如何に確固たるものであり、国際間に堂々たる地位を得ているものかを示し、政府の信用を築きたいがために外ならない。さればこそ、誣言たるを問わず、捏言たるを問わず、あらゆる逆宣伝を用いて強硬の論を吐かねばならないのである。
…中略…
(九月二十二日民国日報)
◇施肇基連盟に於いて動議す。
日本の完全に我が領土を破壊せることを声明。
連盟規約に拠り、日軍の行動に干渉を請う。
理事会に於いて今日審議。
(本社南京発電) 外交部は今日、ジュネーブ発電に接す。二十一日朝我代表施肇基氏は、連盟理事会に緊急動議を提出し、極めて詳細に声明を尽くし、連盟国領土の安全を破壊せる責任は全然日本のみにありと言えり。日代表頗る強言、非理、強弁多しと。施代表の水際立った立ち回りぶりを、目のあたりで見るようではないか。
同上書 p.37~45
日本の代表団にはこの事件に関する詳細な情報がなく、一方的に世界にデマ情報を拡散させた支那代表に反論も出来ず、完全に議論の主導権を握られてしまった。
本のタイトルに「排日」「抗日」「反日」を含む全GHQ焚書リスト
以下のリストは、GHQ焚書の全リストの中から、本のタイトルに「排日」あるいは「抗日」、「反日」を含む著作を抽出したものである。
「〇△」欄の「〇」は、「国立国会図書館デジタルコレクション」でネット公開されている本で、「△」は「個人向けデジタル化資料送信サービス」の手続きをすることによって、ネットで読める本である。
「個人向けデジタル化資料送信サービス」については次の記事をご参照願いたい。
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