当時のアメリカ人ジャーナリストが記した中国の排日・抗日運動

共産主義関連

中国で排日運動を仕掛けたのは英米であった

 前回までの「歴史ノート」で四回に分けてGHQに焚書処分された長野朗の著作や当時の新聞記事を紹介してきたが、今回はアメリカ人ジャーナリストのフレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズが一九三八年十一月に著した、”Behind the News in China”(邦訳『中国の戦争宣伝の内幕』:芙蓉書房出版)という書物を紹介することにしたい。

 この本の冒頭で著者は、アメリカ人の視点で、中国が排日に至った経緯について述べている。

 アメリカを含む西洋列強は日本のドアを叩いた。農業国としての閉ざされた中世風の生活を止め、外国に向けて港を開き、世界貿易競争のエキサイティングな儲け話に加わるように誘ったのだ。しぶしぶと、いくぶんおずおずとアメリカやヨーロッパに若者を留学させた。やがて日本は、西洋諸国が新しく見出した保護すべき友人という立場から対等のライバルと見なす程度まで競争力を貯め、成長してきた。

 彼らの態度は変わった。日本の背中をやさしく叩いて、『お前はいい子だ』とはもう言わなくなった。彼らは態度を変え、団結して対抗するようになった。気が利いており、かつ危険なプロパガンダなのだが、日本の商品や国民に対する差別によって日本は世界中にその名誉を毀損され、人々に嫌われただけではなかった。日本をなだめすかして鎖国の孤立から引きずり出したあの西洋列強が、ゆっくりとそして段々と日本の工業生産物を世界の市場から締め出し始めたのだった

田中秀雄訳『中国の戦争宣伝の内幕』p.13~14

 要するに西洋諸国は、わが国がこんなに早く西洋技術を修得し、工業生産において西洋のライバル国となるとは考えてもいなかったのである。西洋諸国は自国の製品を日本市場に売りつけて、日本から富を吸い上げるつもりだったのが、逆に西洋諸国が開拓してきた中国の市場に日本の製品が食い込んで行った。それがアメリカをはじめとする西洋諸国にとっては不愉快きわまりなかったのだ。

 そこで彼らは、わが国に対して「危険なプロパガンダ」を使ってでも、日本製品を中国市場から締め出そうとしたのである。

 長野朗の著作では最初に中国で排日を仕掛けたのは英米であったと書かれていたが、ウィリアムズも同じことを書いていることに注目したい。

 日本には中国というよき教訓の対象となる国がある。隣国で大きく、その重い図体であえぎあえぎしていた。四億五千万の人々が住んでいながら、自らの足で立つこともできないでいた。貧困と悲惨にどっぷりと浸かっていた。その豊かな国土は軍閥によって強奪、掠奪され、西洋列強によって富が吸い取られていた。…中略…

 日本は西洋列強のライバルとなった。中国は彼らの奴隷となった。それゆえに日本は自分が一人の味方もいない事を思い知らされた。そして中国は、かつて外国人を殺戮し掠奪したという過去も忘れられて、突然同情と援助に値する国家と国民というように持ち上げられたのだ。

同上書p.14~15

 このように、中国民衆は長いあいだ軍閥と西洋列強によって搾取されるばかりであったのだが、西洋列国が「危険なプロパガンダ」により日本商品を市場から排除する際に、中国を支援して排日思想を植え付けて民衆にそれを煽ったために、わが国は世界で孤立していくことになってしまったということになる。

日本の投資により発展した満州

 西洋諸国が中国市場で日貨排斥をしかけたために新たなビジネスを開拓せざるを得なくなったわが国は、当時掠奪と殺戮を繰り返す約三十万の匪賊が横行していた満州に目をつけた。そして満州から張学良ら軍閥と傭兵匪賊集団を放逐し、道路などのインフラを整備して学校や鉄道を建設し、本土から工場などを誘致して満州を北支人が嫉妬するほどの国に変貌させてしまったのである。

大連の中心地 満州写真館より

 しかしながら、わが国に新たな危機が到来する。ウィリアムズの文章を続けよう。

 この危機はソビエトロシアからやってきた。西洋諸国は中国で経済計画を作成していた。特にその中の一国は中国に大きな権益を持っていた。ソビエトロシアは政治的計画を作成していた。極東に起きたドラマにおけるソビエトの役割はまだほとんど語られていない。だから私が話そう。モスクワが日本と中国との間に戦争の火を点じたのだ。…中略…

 この四五年、ソビエトは中国に足場を持とうとしていた。…中略…

 …共産主義者たちは飢える数百万の中国人を使って、金持ちや蒋介石、そして彼の南京の軍閥政府、そしてすべての外国人相手に戦わせようと慎重に計画していた。彼らは差し押さえた金持ちの財産、安楽な生活、有り余る食い物をすべての飢えた苦力たちに保証したのだ。…

 蒋介石は驚き、『反日』という方法で中国を統一する考えに絶望的にしがみついた。そして彼や金持たちから大衆の視線をそらそうとしたのだ。いくつかの西洋列強からも彼はひそかにそれを奨励された。蒋介石は中国共産党の戦列についに加わった

 日本は中国だけでなく、国家を超えた反日計画に直面していることを理解した。それは西洋列強とリンクしていたのだ。日本が、またある西洋国家さえもが中国の混乱に秩序を与えてくれると期待していた蒋介石は日本の敵と合流した。しかし日本は果実に錐で穴をあけるような反日の嵐が遠くまで広がり、侮辱と周期的な自国民の殺害に至っても平和的であろうとした

同上書 p.21~22
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 思想問題(8-016)
京城日報 1934.3.1

 中国にせよソビエトにせよ他の西洋列強にしても、満州の発展をそのまま放置できなかった。彼らは、日本が満州人を搾取していると世界に宣伝していたのだが、その嘘が明らかになってしまうことは、極めて都合の悪い事であった。著者はこう書いている。

 新しくできた満州国は蒋介石やその配下の軍閥にとって目の上のたんこぶか、喉に刺さったとげのようなものであった。それは中国共産党にもロシアのボルシェヴィキにとってもそうであった。というのも、貧相きわまる満州から、幸福と繁栄の帝国に満州国は変貌を遂げていたからだ。日本が傀儡政権をうち立て、満州人を搾取しているというプロパガンダが世界的に広まっていてもである。日本の統治であっても、疑いなく満州帝国は繁栄をきわめるだろう。満州国の清潔で賑やかな町と村、よく秩序だった生活、近代的な鉄道と、中国本土の惨めで貧しい、紊乱した状態を比較してみるがいい。たちどころに南京政府もソビエトロシアも秩序というものからほど遠い事が理解されるだろう

 そういう時に西安事件が起こったのだ。それから北京の近くの盧溝橋での日中両国間の敵意の爆発までには大した時間はかからなかった。宣戦布告なき戦争である。真実はまだわからない。しかしその背後にあるものを見ようとする者には、真実は知れ渡っているのである。

同上書 p.23~24

 西安事件というのは前回の記事で書いた通り、一九三六年一二月に反共の蒋介石が張学良に拉致・監禁された事件で、それ以降蒋介石はソビエトのコントロール下に置かれるようになる。

中国共産党はいかにして日本を戦争に巻き込もうとしたか

 西安事件のあと、中国共産党はわが国を戦争に巻き込むために何をやったか。ウィリアムズはこう書いている。

 …中国共産党は日本人を血祭りに挙げることに決めた。もし日本人が二、三千名殺されたして、誰が対応するのだ。虐殺は日本を激昂させるだろう。自国民を殺されて行動を起こさない国はない。面目は立たない。日本人虐殺は日本との戦争になるだろう。蒋介石も戦わざるを得なくなる

 そしてまた、蒋介石は南京で新たに軍隊を熱狂的に作り直そうとしていた。そしてこれによって中国中にさらに大きなスケールでの日本人男女、子供の虐殺がはじまることになった。これには朝鮮人も含まれる。防御方法を持たない無辜の日本人たちは、家で、店で屠殺され、町や村の街路で暴徒に殺された。数えきれない多数の日本人、朝鮮人たちがこうして死んだ。孤立したコミュニティで殺されていく。

同上書 p.32~33

 こういう史実はほとんどわが国では知らされておらず、日本人は中国大陸で悪いことをしてきたと多くの日本人は学校やテレビ番組などで教え込まれてきた。

 しかしながら事実は全く逆で、中国共産党が対日参戦に持ち込むために日本人に対する残酷なテロ事件を何度も起こしたのである。上の画像は昭和十二年七月二十九日に起きた通州事件を報じた新聞記事だが、この頃に多くの日本人が虐殺されたことは本来教科書に書かなければならないと思う。

通州事件と日本政府の対応

 この通州事件のことをウィリアムズはこう書いている。

 私が住んでいた北支の百五十マイル以内のところに、二百名の男女、子供たちが住んでいたが、共産主義者によって殺された。二十名はほんの子供のような少女だった。家から連れ出され、焼いたワイヤーで喉を繋がれて、村の通りに生きたまま吊り下げられていた。空中にぶらぶらされる拷問である。共産党員は野蛮人のように遠吠えしながら、揺れる身体を銃弾で穴だらけにした。

 日本人の友人であるかのように警護者の振りをしていた中国兵による通州の日本人男女、子供らの虐殺は、古代から現代までを見渡して最悪の集団屠殺として歴史に記録されるだろう。それは一九三七年七月二九日の明け方から始まった。そして一日中続いた。家から連れ出され、女子供はこの兵隊ギャングどもに襲い掛かられた。それから男たちと共にゆっくりと拷問にかけられた。ひどいことには手足を切断され、彼らの同国人が彼らを発見した時には、ほとんどの場合、男女の区別もつかなかった。多くの場合、死んだ犠牲者は池の中に投げ込まれていた。水は彼らの血で赤く染まっていた。何時間も女子供の悲鳴が家々から聞こえた。中国兵が強姦し、拷問をかけていたのだ。…中略…

 この血まみれの事件に三百八十人の日本人が巻き込まれた。しかし百二十人は逃げおおせた。犯され殺された者の多くは子供であった。 …中略… 中国人たちは焼けたワイヤーを鼻から喉へと通し、両耳を叩いて鼓膜を破り、彼らの『助けてくれ』との叫びを聞こえなくさせた。目玉を抉り出し、自分の拷問者を見られなくした。

同上書 p.33~34
通州事件を報じる東京日日新聞

 通州事件の犠牲者の名簿も現場の写真も、生存者の手記も残されている。わが国では新聞や雑誌にも詳しく報道されている。ウィリアムズの文章には誇張はないと思う。

 しかし、この様な酷い事をした中国兵をせっかく日本軍が摑まえても、「罪を憎んで人を憎まず」のサムライ精神で臨み、「もうああいうことをしてはいけない。さあ行け。」と説いて帰したというのである。

昔も今も宣伝が苦手なわが国

 「通州事件」の際に、わが国が世界に対して、このような残虐きわまりない行為を訴えていれば、世界が中国を非難していたのだろうが、日本側は中国側の酷い行為を世界にアピールしなかったために、世界は中国でこのような虐殺行為があったことを知られていないとウィリアムズは書いている。ちなみにこの本が刊行されたのは、「通州事件」が起きてからわずか一年四ヶ月しか経っていないのだ。

 …もし他の国でこういうことが起きれば、そのニュースは世界中に広まって、その恐ろしさに縮み上がるだろう。そして殺された人々の国は直ちに行動を起こすだろう。しかし、日本人は宣伝が下手である。商業や戦争において西洋諸国のような方法を取ることに熟達していたとしても、日本人は自らの敵が最強のプロパガンダ勢力であることにもかかわらず、宣伝を無視するであろう。

 中国にいる外国人には驚きとしか思えないのだが、日本はすぐには動かない。彼らは共産主義者によって虐殺が遂行されていたことが分っていた。また西洋諸国が日本を世界貿易市場から締め出した以上、北支との間でビジネスをしなければならないことが分っていた。率直に言って、中国とは戦争をしたくなかったのである

 中国政府がロシアのボルシェヴィズムの罠に絡め取られていることも分っていた。しかしそれでも中国との人々とは戦争をしたくはなかったのである。なぜなら中国は隣国であり、もし望むならば、生きていくためのなくてはならないお客様だったのである。

同上書 p.36

 日本人は我慢強い民族であるが故に、わが国を蒋介石との戦争に引きずり込むために、中国共産党はここまで卑劣な行為で挑発をしなければならなかったのかも知れないが、ここまで酷いことをされながらわが国は世界にアピールすることもせず、中国と戦おうともしなかったことを知るべきである。

 しかしながら戦後占領軍によって、このような「戦勝国にとって都合の悪い史実」が封印され、「わが国が侵略国家であり、戦争責任はわが国にある」という薄っぺらい歴史観を押し付けられてしまった。

 学校で学んできた歴史もマスコミなどによる昭和史の解説も、いずれも同じ歴史観で語られるために、ほとんどの日本人が自虐史観に洗脳されてしまっているのが現状だ。

 いずれ近現代史は史実に忠実に書き直されるべきだと考えるのだが、それは決して容易なことではない。
 現状の歴史叙述ではわが国だけが悪かったように描かれるのだが、それを書き換えるとなると、戦勝国の一部や中国が「戦争犯罪者」の汚名を被ることになってしまう。彼らにとっては、現状の歴史観が最も居心地のよいものであり、これを書き換える動きに対しては「歴史修正主義」とレッテルを貼って阻止しようとしている。しかしながら、史実ではない歴史叙述は、いずれ世界で通用しなくなる日が来るのではないだろうか。

ラダビノード・パール博士の顕彰碑(京都霊山護国神社)

 戦勝国が我が国を裁いた東京裁判の十一人の判事の中でただ一人、日本人被告全員無罪の判決を下したインド代表判事のラダビノード・パール博士の顕彰碑が、靖国神社内苑(東京都千代田区)と京都霊山護国神社(京都市東山区)にあり、その碑にはこう刻まれている。

 時が熱狂と偏見とをやわらげた暁には また理性が虚偽からその仮面を剥ぎ取った暁には、その時こそ正義の女神はその秤を平衡に保ちながら、過去の賞罰の多くにそのところを変えることを要求するであろう

 第二次世界大戦が終わって七十七年が経過した。そろそろ日本人も真実の歴史に目覚めるべき時ではないだろうか。大多数の日本人の理性が、嘘で固められた「自虐史観」の仮面を剥ぎ取らない限り、「正義の女神」が歴史が書き換えを要求することは難しいと思う。

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