GHQの焚書リストを見ていると、なぜこんなテーマの書籍を没収廃棄を命じたのかと思われるタイトルの本がかなりあるのだが、オーストラリアに関する歴史書がなぜ封印されたかについては、実際に読んでみるとよく理解できる。多くの焚書本に書かれていることは、戦後の日本人にほとんど知らされていない重要な歴史的史実のオン・パレードなのである。その歴史的事実とは、多くの場合戦勝国であるイギリスにとって都合の悪い真実である。
GHQ焚書は、3割近くが「国立国会図書館デジタルコレクション」でネット公開されているのだが、ネット公開されていない本を紹介したい。
たとえば宮田峯一著『濠洲連邦』はこう記されている。
従来英国は刑法によって囚徒をアメリカに送っていたが、アメリカ独立後それを停止するに至った結果、起こった問題だった。
十八世紀には、大多数の囚徒をアメリカ植民地に送るのが慣習であって、1717年から独立戦争までの間に、少なくとも五万人がアメリカに送られていた。しかし、今やアメリカは英国から独立したのであるから、この制度を続けることは出来なくなった。ところが英国の法律は、依然として流刑を一つの刑罰としており、裁判官にその判決を下させていたので、これらの囚徒を収容する刑務所は狭隘を告げるに至った。当時この刑に処せられた者は十万人にも及んだといわれる。
政府は南アフリカに流刑地を物色した。そしてそこに数百人を送ったが、その地は実に疫病と飢饉の巣窟だった。エドモンド・パークは「…これらの人々をアフリカへの流刑に処することは、一見温情のように見えるが、実際は残虐と呼ぶのが正当であるかも知れない。英国で断頭台の露と消えさす方が、アフリカの気候と野蛮人に殺させるよりははるかに慈悲である。」と、議会で痛烈に政府を攻撃している。
(宮田峯一著『濠洲連邦』紘文社 昭和17年刊 p.24~25)
英国はアメリカ植民地に囚人を送り込んでいたのだが、アメリカが1776年に独立したために新たな流刑先を探す必要に迫られることとなる。またアメリカの独立戦争において終始英国本国に対して忠誠を尽くした「王権党」のメンバーが、アメリカ独立後に新政府より苛酷な扱いを受けていたことから、彼らの移住地を探す必要もあった。最初にアフリカに囚人を送り込んだのだが失敗に終わり、そこで目をつけられたのが、オーストラリアであったという。
…1785年、ジョージ・ヤング提督は、ニュー・サウス・ウェールズへの王権党員と囚徒との詳細な移住案を立てて、これを政府に提出し、ニュー・ホランド(オーストラリア)はヨーロッパから遠隔の地にあるから、そこへ囚徒を移住させることは、つまり英国から永久に不良分子を放逐することになるという点を特に強調した。
アフリカにおける移民の失敗と、ニュー・ホランドを適当な移民地とする議論は、ついに政府を動かすに至った。しかし、1787年の議会における英国王の詔書には「英帝國各地における刑務所の狭隘より生じる不便を除去するため」という文句はあるが、王権党員の処置については一言も言及していない。このように当時の英政府もやはり、敗北した本国軍隊に味方して不幸に陥った人々に報いる手段は講じなかった。
こうして濠洲は、これら英国民中でも醜劣な人間の屑を投げ捨てる芥捨場とされたのである。ビットのような大政治家の頭にも、英国は南半球に大国家建設の基礎を築くのだという観念は全く浮かばなかったのである。…<中略>…1786年に是認された植民地から、今日の濠洲連邦が生まれたからである。
(同上書 p.26~27)
かくしてオーストラリアは英国の植民地となったのだが、もともとこの大陸には石器時代の生活をしていた原住民が多数住んでいた。英国人はこれらの人々を残虐な方法で殺戮していったのである。同上書にはオーストラリアやタスマニア原住民殺害に関する具体的な事例がいくつか紹介されていて、タスマニア人は全滅してしまい、オーストラリア原住民についてはわずかに二万人程度だけが残されたという。詳しいことはあとで紹介する西尾幹二氏の動画を見て頂くこととして、どの程度の原住民が犠牲になったかについては同上書にこう記されている。
1788年、濠洲初代総督フィリップ海軍大佐がシドニーに植民地を開設した当時は、濠洲全土の住民は黒人だけで、その数いくばくであったかを算定することは持ちろな不可能であるが、フィリップは、ボタニー湾及びジャクソン湾界隈に1500人ばかりいたと推定している。1837年にはフィリップ湾地方には約6000人いたと推定され、南部地方よりも帰航の暖かい北部、西部、東部地方にはずっと沢山いたことは確かで、植民当初の濠洲原住民の総数は、宣教師グリブルの評価によると、約百万人を算したと言われているが、とにかく少なくとも二十万人以上はいたものと推定されている。
ところが、無情な英人の毒牙にかかり、この単純な原住民の各部族は短時日の間に、ほとんど全滅に瀕したのである。全滅しない部族にも、悪意ある英人は、癩病、梅毒の如き業病や、飲酒の悪癖などで、原住民を絶滅さすべく、その種子を彼等の間に蒔きつけておいたのである。
総督中には人道的正義の人もあって、自らの責任感に目覚め、原住民の救済と保護に乗り出した者もあったが、時既におそく、病膏肓にはいっていたという状態だったため、何等の効果も収めなかった。黒人絶滅に腐心する大衆に抗し、実際に誠意を尽くして、国人を保護し保存せんとして起ちあがった博愛団体もあったが、…その頽勢を挽回することは到底不可能であった。現今では、運よく大陸の最も奥地に逃避した数部族を除いては、濠洲の原住民の数は非常に減少し、十指で算えられる程の病弱した黒人が、ある州の首都の郊外にある特定保護所に収容されているだけである。
(同上書 p.159~160)
具体的に英国人がどのような行為を行ったかは、西尾幹二氏が講義で述べておられるので、興味のある方は次の動画を視聴して頂きたい。(Youtubeにはこの動画は検索しても見つかりません)
英国人が行った行為はホロコーストとして歴史に残されてもおかしくなかったのだが、彼らはそういう記述のある本を徹底的に没収して廃棄し、日本人の記憶から消し去ろうとした。その目的は、おそらく、敗戦国に「悪い国」のレッテルを貼るためではなかったか。
わが国の戦後の歴史研究の多くは、戦勝国にとって都合の悪い史実を封印したままの産物であったとの印象がぬぐえない。GHQが封印した本に書かれている戦前・戦中の研究成果を取り戻さなければ、歴史の真実に近づくことができないのではないだろうか。
以下のリストはGHQ焚書のリストの中から、「濠洲」「タスマニア」とついでに「ニュージーランド」で検索して作成したものだが、全部で18冊のうち4冊がネット公開されている。
タイトル | 著者・編者 | 出版社 | 国立国会図書館デジタルコレクションURL | 出版年 |
印度と濠洲 | 松本悟朗 | 聖紀書房 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1044233 | 昭和17 |
濠洲 | 上野巳世次 | 六興出版部 | ||
濠洲 | 土屋元作 | 博文館 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1111530 | 昭和18 |
濠洲及南太平洋 | 長倉矯介 | 日本書房 | ||
濠洲史 | 泉 信介 | 人文閣 | ||
濠洲事情 | 白 仁泰 | 立命館出版部 | ||
濠洲侵略史 | 斑目文雄 | 欧文舎 | ||
濠洲の運命 | 井上武夫 | 肇書房 | ||
濠洲の現勢 太平洋叢書 | 伊藤孝一 | 海洋文化社 | ||
濠洲の社会と経済 | 岡倉古志郎 | 電通出版部 | ||
濠洲連邦 | 宮田峰一 | 紘文社 | ||
最近の濠洲事情 | 西川忠一郎 | 三洋堂書店 | ||
最近の濠洲に使して | 八木英三 | 岩手日報社 | ||
大東亜戦における重慶・インド・濠洲 | 東京日日新聞東亜部 編 | 大同出版社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1273599 | 昭和17 |
ニユージーランド | 小関順平 | 宝雲社 | ||
ニユージーランド | 和田俊二 | 朝日新聞社 | ||
ニユージーランドの産業資源 | 松田信夫 | 春潮社 | ||
東印度及濠洲の点描 | 小林織之助 | 統正社 | https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1273604 | 昭和17 |
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ブログ活動10年目の節目に当たり、前ブログ(『しばやんの日々』)で書き溜めてきたテーマをもとに、2019年4月に初めての著書である『大航海時代にわが国が西洋の植民地にならなかったのはなぜか』を出版しています。
通説ではほとんど無視されていますが、キリスト教伝来以降ポルトガルやスペインがわが国を植民地にする意志を持っていたことは当時の記録を読めば明らかです。キリスト教が広められるとともに多くの寺や神社が破壊され、多くの日本人が海外に奴隷に売られ、長崎などの日本の領土がイエズス会などに奪われていったのですが、当時の為政者たちはいかにして西洋の侵略からわが国を守ろうとしたのかという視点で、鉄砲伝来から鎖国に至るまでの約100年の歴史をまとめた内容になっています。
読んで頂ければ通説が何を隠そうとしているのかがお分かりになると思います。興味のある方は是非ご一読ください。
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コメント
こんにちは♪
いつもありがとうございます。
今月もよろしくお願いいたします。
今日は「人気記事ランキング50 最近90日間」の一位の記事を拝読いたしました。
Ounaさん、古い記事を読んで頂きありがとうございます。今月もよろしくお願いします。
歴史ブログは古い記事でもいろんな人に読んで頂けるので、とても励みになります。
初めてこちらのブログを拝読しました。
とても素晴らしい内容でした。
これからも頑張って下さい。
ありがとうございます。とても励みになります。
これからも頑張りますので、時々覗いてみて下さい。