GHQが焚書処分した米国側の真珠湾空襲の記録1

ハワイ

『真珠湾』という本がなぜ翻訳出版されたのか

 昭和十六年(1941年)十二月八日に日本軍がハワイの真珠湾に碇泊していた多数の戦艦を撃沈し、ホノルルの飛行場を爆撃したのだが、この攻撃に関してアメリカ側は「奇襲だ。騙し討ちだ。」と主張し、「日本は卑怯な国である」と世界に宣伝し、今もそのアメリカの主張が歴史的事実であるかの如く伝わっている。

 GHQ焚書リストの中にアメリカ人のブレーク・クラークという人物が著した『真珠湾』という本がある。この本が翻訳出版されたのは昭和十八年四月で、訳者は、海軍大佐の広瀬彦太と書かれている。なぜ戦争の最中にこの本が海軍によって訳出されたかについては、訳者の広瀬彦太が冒頭に書いた「本書を読む人の為に」を読むとよくわかる。

本書があくまで敵国人の手によって書かれた記録である…ことをまず念頭において、読者はこの訳書を読んでいただきたい。…中略…
 本書が敵の宣伝謀略戦の一翼をうけたまわって執筆され出版されたという事実を、本文を読みながら読者は忘れずに思い出していただきたい。…中略…

 本書が、宣伝謀略の目的を以て書かれた…にもかかわらず、本書は、いわゆる語るに落ちたとでもいうのであろうか、まるで彼らの意図とは反対の効果を挙げているのだから皮肉である。すなわち本書の原著者は、日本の真珠湾攻撃に関し、米国指導者が、ことさらに隠蔽せんとし、あるいは触れざらんとし、あるいは欺瞞せんとした諸事実を、無意識的にか、または不用意にか、ことごとく本書において白日の下にさらけ出しているのである。
ブレーク・クラーク『真珠湾』鱒書房 昭和18年 p.3-7

 アメリカは日本軍による真珠湾攻撃で大きな損害が出たことについて、当初はひた隠しに隠そうとし、日本軍も正確には掴めていなかったのだが、この本には米軍が具体的にどのようなダメージを受けたかが具体的に描かれている。また日本軍がいかなる戦い方をしたについても詳しく記されている。
 アメリカで本書が出版されたのは、真珠湾攻撃が不意打ちであり、莫大な損害が出たことを伝えることで、アメリカ国民の戦意を高揚させる意図があったことは言うまでもないが、この本の各章の冒頭には訳者の解説が付されており、アメリカの宣伝謀略の正体が明らかにされている
 またこの本の巻末には「ロバーツ委員会報告書」の訳文と訳者による解説が載せられている。この報告書はルーズヴェルト大統領が真珠湾での敗戦原因調査を命じたもので、アメリカの当時の政治情勢、軍事情勢を分析し、真珠湾で米軍が惨敗した原因がアメリカ側にあったことがまとめられている
 この『真珠湾』という書籍がGHQによって焚書処分された理由は、おそらく「ロバーツ委員会報告書」の内容が収録されていることや、訳者の解説によりアメリカの宣伝謀略の内容が曝されている点にあるのだろう。

「真珠湾攻撃は騙し討ち」はアメリカのプロパガンダ

 最初の「ホノルルの驚愕」の章に真珠湾攻撃当日の朝の状況が描かれているのだが、本文の前に訳者の解説が書かれている。訳者の広瀬大佐は、アメリカによる「真珠湾攻撃は日本軍による騙し討ち」とする主張に対して反論しているのだが、その一部を引用させていただくこととしたい。

 この章には、文字どおりホノルルの驚愕ぶりが書かれている。爆撃の轟音を耳にしながらも、みんな演習だと思って、安心しきって朝の食卓に向かっていた話。ラジオの放送がしきりに、ほんものだ、ほんものの爆撃だといってわめき立て、それによって、はじめて日本軍の攻撃を知り、市中がたちまち極度の混乱におちいる話などが、かなり詳細に書いてある。

 だが、この章で注意しなければならないことは、この日本軍の真珠湾攻撃を目して、「トレチャラス・アタック」すなわち騙し討ちなりと強弁している個所についてである。このことは、米国政府が敗戦のてれかくしに当時さかんにいいふらしていたし、また本書の著者も、この章のみならず他の章においても、くりかえし強調しているところであるが、その目的は、この言葉のなかに、ハワイは不意打ちをくったのだという印象を巧みに織り込み、それによって米国民に卑劣な復讐の野性を燃え立たせようと目論んでいるのである。

 ところが、これに関しては、米国政府自らその然らざる所以を告白しているのだから面白い。例のロバーツ委員会の報告書がそれである。ロバーツ委員会というのは、周知のごとく、大統領ルーズヴェルトの命により、大審院オーエン・J・ロバーツを委員長に、陸海空の代表的将星を委員として組織されたハワイ敗戦真相調査委員会であるが、この委員会が現地に出張して、一ヶ月以上にわたり調査究明した結果作成せる報告書によると、ハワイ惨敗の原因は、決して日本軍の「騙し討ち」にあったのではなく、まったく現地陸海軍当局の油断と無準備とにあったということを明白に指摘しているのである。…中略…

 ちょっと付け加えておきたいのは、日米戦争は昭和十六年十一月二十六日にすでに勃発していたという事実である。あの日、国務長官ハルは、忍苦半年におよぶ日米の和協態度をふみにじって、わが野村、来栖両大使に対し、絶対に受諾不能の最後通牒にもひとしき暴慢無礼な挑戦状を突き付けて来た。これアメリカの宣戦布告でなくて何であろう。敵側の新聞サタデー・イヴニング・ポストですら「アメリカ人の一部には、日本の真珠湾攻撃を騙し討ちだと考えているものが相当見受けられるけれども、そういう人たちは、十一月二十六日に日本側に手交した米国の回答をよく読んでみるがよい。日本の軍事行動は、十一月二十六日の、いわゆる果たし状の当然の帰結として起こったものだ。騙し討ちなどというのは、当たらぬもまた甚だしきものである」と言っているではないか。…
同上書 p.15-17

 戦後の歴史叙述に於いては「ロバーツ委員会報告書」の内容に触れることはなく、日本軍は「騙し討ちをした卑怯な国」として描かれるのが多いのだが、アメリカの公式文書で真珠湾に於ける敗因が現地の米軍にあると記されていることはもっと知られてよいだろう。
 しかしながらアメリカは、日本軍が奇襲したと喧伝することによって被害者ポジションを取り、「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」というスローガンでアメリカ青年の戦意を高揚させていくことになるのだ。

 「ロバーツ委員会報告書」に書かれていることだが、どちらが先に攻撃を始めたかという単純な問題についても、実際は米軍が先に攻撃しているという。訳者の広瀬は次のように解説している。

 同委員会の報告書は、米国軍艦ワードおよび海軍偵察機が、わが真珠湾攻撃に先立つ約一時間二十分前、司令長官キンメルの命令に基づき、公海において公然わが艦艇に攻撃を加えたという事実を明らかにしているのである。あぶなかったともいえる。皇国の蹶起がなければ米国が先制していたかも知れなかったのである。

 要するに、この戦争こそは、東亜及び太平洋における覇権の確立を企図したアメリカが、わが国の正当なる地位と権利とを否認せんとして、あくまでもわが国に対して強制したる戦争である。わが戦力を過小評価し、経済力を蔑視し、日本起つ能わずと侮り、あのような最後案をつきつけて、わが国の面目を完全に蹂躙して、もはやどうにも戦う以外に方法がないようにしておきながら、やむなく堪忍袋の緒を切った日本が猛然起って真珠湾に一撃を加えると、自国指揮官怠慢や誤断は棚にあげて、騙し討ちだ不意討ちだと騒ぎ立て、もって開戦の責任をわが国になすりつけようとしているのだ。何たる卑劣、なんたる陰険な行為であろう。
同上書 p.18

「絶対に受諾不能の最後通牒にもひとしき暴慢無礼な挑戦状」あるいは「最後案」と書いているのは、いわゆる「ハル・ノート」だが、十一月二十六日にこの文書が突き付けられるまで、わが国では日米交渉を成立させようと動いていて、政府も軍部も米英と戦争を欲したものは誰もいなかったと言われている。ところが、アメリカからわが国が絶対に飲めない内容の挑戦状をたたきつけられて、わが国は自衛の為に戦うほかはないと決断することになった。

ハズバンド・キンメル大将

 一方アメリカは、「ハル・ノート」を出せば、日本は起ちあがざるを得ないことを読んで、十一月二十七日には参謀総長マーシャルからハワイの陸軍司令官に「日米交渉は破局に終わった。もはや再開の見込みはない…」と警告し、海軍にも作戦本部長から太平洋艦隊司令長官キンメル大将に「数日後に日本は戦争行動に入るだろう。よってこの訓電は戦争の最後の警告だと思考してよろしい」と打電している

 要するに真珠湾で米軍が大敗した原因は、戦争に突入する警告を受けていたにもかかわらず、ハワイの陸海軍に油断があり準備ができていなかったという話であり、日本軍が騙し討ちをしたことで敗れたとは認識されておらず、その証拠となるアメリカの公文書が存在しているのだ。「ハル・ノート」については、いずれ別の機会に書く予定である。

日本軍による真珠湾周辺の軍事施設攻撃

 ハワイの真珠湾軍港の周辺には、この軍港を防衛するためホイラー飛行場、ヒッカム飛行場、カネオエ海軍飛行場、海兵隊基地などが存在していたのだが、日本軍はこれらの施設を短時間で破壊している。

 例えば海兵隊基地は新設されたばかりの建物でまだ未完成の部分も存在しただが、日本軍の攻撃についてブレーク・クラークは次のように書いている。

 日本軍の最初の攻撃は、地上飛行機に集中された。そのうちわずかの隙間を見て、海兵隊員は、まだ燃えていない飛行機を、滑走路からとりのけるのに躍起となった。かれらは、機関銃を飛行機にとりつけた。これらの飛行機には、なんらの遮蔽物も掩護物ももなかった。上からまる見えであった。義勇兵は、機関銃のとりつけに、めざましい働きを示した。…中略…

 第二回目の爆撃は、さらにはげしく、つぎからつぎへと、日本の編隊群は、海兵隊飛行場の上空を荒れまわり、砲、機関銃は、地上をあますところなくめったうちに撃ちつくし、辛うじてその猛撃をまぬかれたものも、つぎに来た爆弾の洗礼を受けて潰滅するという惨状であった。…中略…
 日本軍の攻撃目標は、自動車、飛行機であった。…
同上書 p.59-61

 ホイラー飛行場においては、日本軍の急降下爆撃機が兵器庫を爆撃したのを見て、ウェルチ大尉とテーラー大尉が戦闘機に搭乗し日本機を撃墜するために離陸し、途中でハリー・ブラウン中尉、ロバート・ロジャース大尉やサンダース中尉も離陸して日本機と戦った場面が本書に描かれているが、米軍で生き残ったのはサンダース機一機だけで、日本の急降下爆撃機は、つぎからつぎへと、格納庫をねらって爆弾を落として行ったという。
 ヒッカム飛行場では日本軍はまず格納庫を爆撃し、次いで空港に並んでいた飛行機に機銃掃射を浴びせている。同書には米軍の周章狼狽ぶりが次のように記されている。

 格納庫に命中した第一弾が、ここの飛行場員数千人にとっては、いわば開戦の第一報であった。
 この第一報と同時に、九つの兵舎から、飛行場員は、まるで蜘蛛の子を散らすように、ありとあらゆる服装で飛び出した――パンツ一枚だけではね出すもの、シャツを着ただけで駆け出すもの、ズボンだけで飛び出すもの、なかには一糸もまとわず素っ裸のまま飛び出してきたものもあった。

「なんだ、なんだ。また演習か」
「ちがうぞ。演習じゃない。ほんものの爆弾だ!」
という有様であった。
同上書 p.72-73

 日本軍が攻撃したのは軍事施設や戦闘機等であり、民間人や民間施設などは攻撃していないことが、読み進んでいくとわかってくる。

 日本機による攻撃は、十五分から二十分ほどつづいた。その攻撃の勅語、街路は、まるで人間の洪水であった。爆撃地帯から、救急車や自動車がひっきりなしに往復した。負傷者を運び出すため、学校バス、陸軍貨物車、工場トラック、個人の自家用車など、自動車という自動車は、すべて徴発され、それがあらゆる街路を埋め尽くした
 ホノルルから、外科用の器具類を病院にはこぶについても、自動車が必要だった
同上書 p.77-78

 負傷者を病院に運ぶために学校バスや、工場トラックや個人自家用車が徴発され、あらゆる街路を埋め尽くしたということは、日本軍は民間人を襲撃するようなことはしていないことを意味している。アメリカ軍は日本本土の各地を空襲し多くの民間人が犠牲になったが、日本人がハワイの民間人を狙って撃つようなことはどこにも書かれていないのである。
 戦後製作された真珠湾攻撃に関する映画のシーンなどでは日本軍が市街地を攻撃して民間人が逃げ回る場面を何度か見た記憶があるのだが、こういう映画も戦後の日本人を自虐史観で洗脳されたままにしておく目的で制作されたのであろう。
 真珠湾攻撃と、「ロバーツ委員会報告書」については次回に書くこととしたい。

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