GHQが焚書処分した実業家・経済人の著書~~小林一三『戦後はどうなるか』

GHQ焚書
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 GHQが没収廃棄した書籍には実業家・経済人の著作も少なからずある。企業経営者は、時代の流れを読み誤ると事業にも大きく影響することになるので、名経営者と呼ばれる人物は当時の論調などに惑わされることなく、しっかりと世界や経済の動きを捉えており、現在の日本人にとって当時の情勢をわかりやすく伝えている著作を残している。

小林一三(Wikipediaより)

 小林一三といえば、阪急東宝グループの創業者であり東京電燈、日本軽金属の経営にも参画した財界の重鎮で、後に政界に進出して第二次近衛内閣の商工大臣を務めた人物である。いくつかの著作があるが、その中で昭和十三年に上梓した『戦後はどうなるか』がGHQによって焚書処分されている。今回は、この一部を紹介させていただきたい。

 小林一三がこの本を上梓した昭和十三年は、日中戦争(支那事変)の長期化を予想し、わが国のすべての人的・物的資源を政府が統制運用できるよう国家総動員法が制定された年である。しかしながら二年後の昭和十五年は、紀元二千六百年という記念すべき年だということで、東京オリンピックと札幌冬季オリンピック、さらに東京で日本万国博覧会が開催される予定であり、これらの行事は予定通り行うという姿勢であった。のちにオリンピックと万博は中止されることになったのだが、なぜ日中戦争が長引いたかについて、小林はこう述べている。

 昭和十二年七月七日、盧溝橋事件に突発したる北支事変は、不拡大主義の声明も一片の反故となって、長期抗戦、陸海軍の進軍ラッパは、漢口陥落を目標として、いまや、敵の咽喉に迫らんとしている。この間まさに一ヶ年、連戦連敗の蒋政権をして、なお、意地強く対抗しつつある理由はどこにあるか。それは、英米ソ仏など諸外国の援助とその支持によるからである。然らば、何ゆえにこれらの諸外国は、まさに没落せんとする蒋政権を援助するのであるか。それはわが国の財政を悲観したからである。諸外国は何ゆえにわが国の財政を悲観するのであるか。わが国に対する皮相の見解と、誤られたる観察によって「日本は戦争には必ず勝つ。しかし、勝つまでに、日本の財政は、果たしてうまくやっていけるのだろうか。日本の政局は、紛擾なしに挙国一致、革新政策を遂行し得るだろうか。この戦局が長引けば長引くほど、日本は苦境に立つものである。日本をして苦境に立たしむることは、支那に重大なる利害関係を持つ、我ら第三国の利益である」という結論は、諸外国をして蒋政権を、あらゆる手段によって援助せしめる所以である。即ち、一部論者の主張しつつある革新政策なるものと、賀屋、吉野両氏の実行せる財政産業政策なるものが、ただに国民をして不安ならしむるのみならず、外国をしてその鼎の軽重を問わしめるに至ったのである。

 しかしながら、それは過去の陰影であって、五月下旬、近衛首相が断行したる内閣改造によって、宇垣、池田、板垣、荒木の四大臣が任命され、国家総動員決行の前奏曲として、物資需給動員計画を発表し、ここに国防の安固と、国民経済の維持を図るため、輸出の振興、生産の増加、消費の統制に関する政策の徹底的強化に着手することになったのであるが、およそ、この種の計画なるものは、実は、開戦当初において、直にその旗幟を鮮明にし、国民をして一大決心を覚悟せしむべかりしものであったのである。

 しかるに何ぞや、1940年のオリンピック競技は必ず実行する、紀元二千六百年記念としての世界博覧会は必ず開設して見せるというような、この余裕綽々たる態度を世界に売り物として、日支戦争の開幕中においてすらも、わが国の実力は、これを断行しうるのである、と言うが如きジェスチャーを誇りとするに至っては、長期抗戦の国策と、相去ること何ぞ遠きやと言いたいのである。世界の識者は、政府の考えているが如く、しかく簡単に信頼を払わないのである。むしろあまりに民国政府を侮り、鎧袖一觸、早く片付くものと軽視することの危険さを考えて、出来るだけ蒋政権を支援し、日支事変を長引かすことによって、日本を苦しましめ、将来自国の立場を、有利に展開せんと企つること察するに余りありである。…

(小林一三 著『戦後はどうなるか』青年書房 昭和13年刊 p.5~8)
戦後はどうなるか - 国立国会図書館デジタルコレクション
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 以下のリストはGHQ焚書のリストの中から、実業界で活躍した人物の著書をできるだけ集めたものだが、22名64点の書籍が見つかった。内25点は「国立国会図書館」でネット公開されている。

タイトル著者・編者著者コメント出版社国立国会図書館デジタルコレクションURL出版年
皇国女性 教養講座赤尾好夫 編旺文社・文化放送等創業旺文社
皇国女性教養講座
第4号
赤尾好夫 編旺文社・文化放送等創業旺文社
皇国女性教養講座
第5号
赤尾好夫 編旺文社・文化放送等創業旺文社
国家の危機に際して
青年に愬う
赤尾好夫旺文社・文化放送等創業旺文社
今後日本は何うなるか石原広一郎石原産業創業新日本建設
青年連盟
転換日本の進路石原広一郎石原産業創業三省堂
国家総動員態勢に就て植村甲午郎 石炭統制会理事長経済研究会https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1452035昭和13
我国現下の
資源問題と其将来
植村甲午郎
講演
石炭統制会理事長啓明会事務所https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1445832昭和13
生産第一主義大河内正敏 理化学研究所所長科学主義工業社
統制経済と経済戦大河内正敏 理化学研究所所長科学主義工業社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1441623昭和15
必勝の増産大河内正敏理化学研究所所長科学主義工業社
持てる国 日本大河内正敏理化学研究所所長科学主義工業社
時局産業経済打開策小野義夫 ラサ工業社長ダイヤモンド社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460961昭和16
世界新秩序を繞る外交鹿島守之助鹿島建設社長巌松堂書店
帝国の外交と大東亜共栄圏鹿島守之助鹿島建設社長翼賛図書刊行会
帝国外交の基本政策鹿島守之助鹿島建設社長巌松堂書店
防共協定とナチス、
ファッショ革命
鹿島守之助鹿島建設社長
巌松堂書店
航空対談菊池寛 文芸春秋社創設文芸春秋社
世界大戦物語菊池寛 文芸春秋社創設新日本社
大衆明治史. 下巻菊池寛 文芸春秋社創設汎洋社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1041878昭和16
二千六百年史抄菊池寛 文芸春秋社創設同盟通信社
日清日露戦争物語 :
附・アジアの盟主日本
菊池寛文芸春秋社創設新日本社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1718008昭和12
日本英雄伝. 第4巻 
さ~き
菊池寛 監修文芸春秋社創設非凡閣https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1222327昭和11
明治海将伝菊池寛 文芸春秋社創設万里閣https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1463799昭和15
皇道経済論久原房之助 久原財閥総帥千倉書房https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1025410昭和8
国民を基礎とする
政治機構改革に関する私見
久原房之助 久原財閥総帥中野豊治https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1097155昭和14
時局の線に立ちて栗本勇之助栗本鉄工所創業者日本評論社
東の日本・西の独逸伍堂卓雄 昭和製鋼所設立金星堂https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1268393昭和13
盟邦独逸に使して :
ヒトライズムの成果を語る
伍堂卓雄 述昭和製鋼所設立横浜貿易協会https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1270555昭和13
戦後はどうなるか小林一三 阪急・東宝グループ創業青年書房https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1256050昭和13
急降下以後の空軍佐藤喜一郎帝国銀行頭取ダイヤモンド社
街の浮標佐藤喜一郎帝国銀行頭取先生書房
落下傘部隊佐藤喜一郎帝国銀行頭取同盟通信社
陸海軍航空秘録
危機に生きる
佐藤喜一郎帝国銀行頭取凡人社
支那及満州佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第1巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第2巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第3巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第4巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第5巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第6巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第7巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第8巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第9巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
日本精神講座 第10巻佐藤義亮 編新潮社創立者新潮社
皇室中心主義津村重舎津村順天堂創業政治経済時論社
皇室中心主義 第二編津村重舎津村順天堂創業時潮社出版部
修養全集日本の誇12野間清治編大日本雄弁会
講談社創業者
大日本雄弁会
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武道宝鑒野間清治 編大日本雄弁会
講談社創業者
大日本雄弁会
講談社
西洋文明の没落
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福沢桃介 大同電力初代社長ダイヤモンド社出版部https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1130737昭和7
蘭領ニューギニア買収案松江春次 南洋興発創業者松江春次https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1711880昭和9
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政党を脱退して
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世界変局と大和民族の使命
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非常時とは何ぞや松岡洋右満鉄総裁政党解消連盟
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松岡洋右 述満鉄総裁又新社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1080101昭和9
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戦時特輯独逸大観光永星郎 編電通の創業者日本電報通信社
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金本位制の将来
山室宗文三菱信託社長改造社https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1279141昭和8
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 ブログ活動10年目の節目に当たり、前ブログ(『しばやんの日々』)で書き溜めてきたテーマをもとに、2019年4月に初めての著書である『大航海時代にわが国が西洋の植民地にならなかったのはなぜか』を出版しています。
 通説ではほとんど無視されていますが、キリスト教伝来以降ポルトガルやスペインがわが国を植民地にする意志を持っていたことは当時の記録を読めば明らかです。キリスト教が広められるとともに多くの寺や神社が破壊され、多くの日本人が海外に奴隷に売られ、長崎などの日本の領土がイエズス会などに奪われていったのですが、当時の為政者たちはいかにして西洋の侵略からわが国を守ろうとしたのかという視点で、鉄砲伝来から鎖国に至るまでの約100年の歴史をまとめた内容になっています。
 読んで頂ければ通説が何を隠そうとしているのかがお分かりになると思います。興味のある方は是非ご一読ください。

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