神戸大学「新聞記事文庫」で古い記事の探し方と利用方法

神戸大学新聞記事文庫

 この記事は神戸大学附属図書館のHP全面リニューアルに伴い、「新聞記事文庫」の利用方法やURLが令和4年9月に大幅に変更されたために、全面的に書き換えました。以下の記事をご参照ください。

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 前回の記事で「国立国会図書館デジタルコレクション」で本の探し方について書いたが、新聞記事についてもネット検索で多くの情報を入手することが可能である。大手の新聞社のなかには、過去記事を有料会員になることで入手できるところもあるようだが、私がよく用いるのは、無料で公開されている神戸大学経済経営研究所の「新聞記事文庫」である。

神戸大学経済経営研究所「新聞記事文庫」 とは

 このデータベースは、神戸大学経済経営研究所によって管理されている明治末から昭和45年までの新聞切抜資料で、利用するにあたり会員登録などは一切不要で、誰でも無料で利用ができる

 神戸大学の前身のひとつである「神戸高等商業学校」が、明治44年から商業経済関係の新聞の切り抜きを開始し、大正8年(1919年)に「商業研究所」が設置されると新聞切り抜き事業は大幅に拡大されていったという。
 戦後になって神戸大学が誕生し、新たに設けられた経済経営研究所にこの事業が継続されたのだが、新聞各社が縮刷版を出すようになったことから事業が縮小され、昭和45年に終焉したものの、明治末から昭和45年まで60年以上にわたって続けられた切抜帳はそのまま残された。その切抜帳は冊数にして約3200冊、記事数にすると約50万件という膨大な量になるという。
 
 この「新聞記事文庫」に収録された新聞の種類は大手紙だけでなく、経済紙や主要地方紙のほか、「台湾日日」「満州日日」「京城日報」等かつてわが国が統治した地域で発行された新聞などが幅広く採録されており、史料価値の高いものである。同じ事件について、代表的な記事を一つ選ぶのではなく、複数の記事を採録していることもありがたいところで、当時の出来事について様々な視点からの論説などを読むことで、日本や世界の情勢や、当時の空気感が伝わってくる。
 特に有難いのは、記事の画像だけでなく多くの記事の全文が文字入力されていることである。もし文字入力がされていなければ、記事を探すのに何時間もかけて膨大な記事を読まなければならないところだが、見出しや本文がデータ化されているおかげで、検索機能を駆使することにより、貴重な記事や論説などを容易に見つけることが可能になっている
 とは言え、当時の経済学・経営学研究者にとって興味深い記事が中心であるので、戦争や大事件の写真付きの記事などが少ないところはやむを得ないところだ。

キーワードで検索し、記事を絞り込む

 今の官僚や政治家やマスコミや大学などが、どこかの国の工作にかかっていることは多くの人が認識しているところと思うのだが、戦前に於いても同様のことが起こっていた。それを「新聞記事文庫」で記事を探す手順について説明してみよう。

① 「神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ『新聞記事文庫』」 にアクセスし、検索ボックスにキーワードを入力して検索ボタンを押す
 学生時代には戦前・戦中の軍隊は軍国主義に染まり暴走したと学んだ記憶があるのだが、暴走した理由は別なところにあるのではないだろうか。たとえば、検索ボックスに「軍隊 赤化」と入れて検索ボタンを押すと、401件の記事がヒットし、そのリストが表示される。ちなみに「赤化」というのは、共産主義思想に洗脳する工作がなされることをいう。

 表示件数を最大の200にし、掲載順を出版年の昇順にするとわかりやすい
 ヒットする記事が多すぎてもっと絞りたい場合は、キーワードを増やしたり、あるいは検索ボタンの右にある詳細検索リンクを押して、検索する新聞を絞ったり、発行日付を絞る。 
 検索結果のリスト画面の右上に「年表形式で見る」というリンクがある。これをクリックすると、総ての記事が年表形式で見ることが可能になるが、表示されているページだけを時系列でみる時に便利なものの、多数の記事を開いていく場合には使いづらい。私は一覧形式で作業することが多い。

②検索結果リストの見出しから、読みたい記事を選び表示する
 表示されたリストには、見出し、副見出し、本文に一字でも「軍隊」「赤化」が出てくる全ての記事がリストアップされているので、外国の軍隊が赤化された記事や、赤化した集団を軍が鎮圧した記事をも含んでいる。パソコンで作業する場合は、ctrlキーを押し下げながら見出しを見て内容を判断して読みたい記事の行の右端の表示ボタンを押していき、あとで読み込むための準備をする。

表示された記事を読んで、興味深い記事を探す

 面白い記事を探すのには記事を片っ端から読むしかないのだがが、長い記事の場合は、ctrlキーとFを同時に押し下げて検索ボックスを呼び出して、検索ボックスにキーワード(例えば「赤化」)を入力すると、記事の中にその言葉がどこに用いられているか、何度用いられているかがわかる。その前後の文章を読んで、探している内容の記事かどうかを判断する。

神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 社会問題(3-018)

 上の画像は大正12年(1923年)6月6日の大阪朝日新聞の第一次共産党事件に関する記事で、堺利彦や山川均ら約80名が検挙されたことを伝えているが、単なる思想上の弾圧事件ではなく、大臣暗殺と軍隊、学生の赤化を企てていたグループであったことが報道されている。このグループは軍隊の一部とも気脈を通じていたとある。
 画面の右は新聞の切り抜き画像で、左側はそれを文字起こししたものである。

神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 思想問題(5-010)

 上の画像は昭和3年(1928年)10月19日の国民新聞の記事だか、ソ連共産党が直接関東軍に対して、「宣伝を行い以て革命を勃発せしむるの方針を執るに決し」組織的な赤化宣伝活動を始めた事が書かれている。この頃には関東軍の中に、共産主義を信奉する者がある程度いたと考えるのが自然である。
 このような興味深い記事が、「新聞記事文庫」の検索機能を用いて、キーワードを変えることでいくらでも見つけることが出来る。

 例えば、当時は多くの大学の学生の多くが共産主義に染まっていたことが問題になっていたのだが、「大学」「左傾」というキーワードで627件の記事がヒットする。

神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 思想問題(5-050)

 上の画像は昭和3年 (1928年) 4月19日の神戸新聞の記事だが、東大、京大、九大、東北大の学長が、大学の左傾化の責任をとって辞任するのではないかという内容で、何名かの教授も辞表を提出することが報じられている。

神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 思想問題(5-079)

 上の画像は同年の12月4日付の大阪毎日新聞の記事だが、上記の4大学だけが問題になっていたのではなく、多くの大学で同様の問題が起こっていたことがわかる。調べればわかるが、陸軍士官学校にも左翼教官がいたのである。こういう思想を持つ学生がかなり軍隊に入って行ったこともまた事実であり、終戦の頃には左翼勢力が軍部や政府の中枢部に根を張っていたのである。

2013年8月11日付 産経新聞朝刊

 上の画像は「新聞記事文庫」ではなく2013年8月11日の産経新聞の記事だが、「昭和20年6月、スイスのベルン駐在の中国国民政府の陸軍武官が米国からの最高機密情報として『日本政府が共産主義者達に降伏している』と重慶に機密電報で報告していたことがロンドンの英国立公文書館所蔵の最高機密文書ULTRAで明らかになった」と書かれている。この機密文書には、当時の日本政府の重要メンバーの多くがコミンテルンに汚染されており、日本の共産主義者たちが他国の共産党と連携しながらソ連に和平工作を仕掛けたということを、中国国民政府の陸軍武官が重慶(中国の臨時首都)に打電していたことを米国が傍受し、英国に最高機密情報として伝えたという内容なのだが、戦後の歴史叙述ではこのような共産主義勢力の動きについては完全に封印されてしまっている。

「新聞記事文庫」を引用するときのルール

 神戸大学「新聞記事文庫」を論文などに引用で用いる場合や個人のブログにリンクする場合にはルールがあり、神戸大学経済経営研究所「新聞記事文庫」を利用しての引用とわかるよう記載する必要がある。このブログでは、記事の画像の左上に書かれている部分(赤く〇で囲んだ部分)をそのまま表示して引用することとしている。
(例)「神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 〇〇(〇-〇〇〇)」

 著作権法で認められている範囲(私的利用・引用・リンク等)を超えたご利用をする場合は、申請が必要となる。神戸大学附属図書館のHPに利用条件や留意事項が記されており、ここから申請フォームに飛ぶことが出来る。

 一昔前なら、研究者が毎日のように新聞記事のファイルと格闘して、何日もかけて興味のある記事を探し当てていたと思うのだが、この方法なら30分程度の時間があれば、誰でも簡単に、面白い記事をいくつでも探し当てることができる。こういうことが可能であるのは、膨大な記事の全文を検索できる文字データが存在し、このデータに誰でもアクセスすることが許されているからである。このような素晴らしいデータベースを一般に公開しておられる神戸大学に感謝の意を表したい。

 この様な過去の新聞記事が将来データベース化されることはGHQも想定しておらず、過去の報道や論評が何の検閲を受けることなく、焚書対象にもならず、当時の文章のままに読むことが出来ることもありがたいところである。少し読むだけで、戦後になって多くの史実が封印されていることがわかる素晴らしいデータベースであり、近現代史に興味のある方は、試しに利用されることをお勧めしたい。

 今後、このデータベースで興味深い記事や論評を見つけたら、このブログの中で紹介する頻度を高めていくこととしたい。

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