「東洋」「アジア」「(大)東亜」の違い
「東洋」は「西洋」の対概念であるが、指し示す地域は本によって異なり、トルコから東のアジア全域を含むケースもあれば中東を除くケースなど様々であるが、一般的には東アジア、東南アジア、南アジアの地域を指す言葉として用いられることが多いようだ。
「アジア」についても同様で、中近東や中央アジア、南アジアを含めるケースもあれば含まないケースもあり様々である。
Wikipediaによると「アジア」は、現在では「ユーラシア大陸のヨーロッパ以外の地域」とあり、アジアとヨーロッパとの地理的境界は、「ウラル山脈–ウラル川–カスピ海–コーカサス山脈–黒海–ボスポラス海峡–マルマラ海–ダーダネルス海峡とすることが多い」と書かれていて、その場合はロシアの大部分を含むことになるのだが、戦前戦中に於いてはさすがにその解釈で「アジア」を捉えている本はないだろうと思って「国立国会図書館デジタルコレクション」でGHQ焚書の『アジア年鑑1935』を開いてその目次を開いて見ると、樺太、中央アジアだけでなく、シベリアや南コーカサス地方(現在のアゼルバイジャン共和国、アルメニア共和国、グルジア)についても記載があり、Wikipediaの解説とあまり変わらないことに驚いてしまった。
外務省のホームページで「アジア」は、東アジアの大部分と東南アジア、南アジアの地域を指す言葉として用いられているのだが、日本人の多くはこの定義を支持するのではないだろうか。このような地図は、戦前における「大東亜共栄圏」の地図にかなり似たものになっていて、多くの日本人にとっては今も昔も「アジア」と「大東亜」で連想する地域にそれほど大きな違いはなく、人によっては「東洋」も同様に考えられていたように思うのだが、これ等の言葉は戦前・戦中に於いてどのように使い分けられていたのであろうか。
よくよく考えると「アジア」や「東洋」は西洋人が作った言葉の訳語で、西洋人中心の考え方、つまり西洋人にとっての侵略の対象、あるいは搾取の対象という考え方からつけられた名称ではないだろうか。
一方「大東亜」は日本人が作った言葉で「アジア」とよく似た領域を指す言葉なのだが、西洋人がこの地域を侵略したというテーマで本を書く場合には「アジア侵略」という五文字だけで、普通の日本人なら白人が侵略した意味合いを理解することとが出来、「大東亜侵略」ではそれがスムーズに伝わらなくなる。
またこの地域の国々でわが国が中心となって連携しようとするテーマで書く場合には「大東亜共栄圏」という言葉が用いられ、「アジア共栄圏」とするとわが国が中心となって連携するというニュアンスが伝わらない。
このように、書きたい内容によって「アジア」と「大東亜」が使い分けられ、「東洋」という言葉を用いる場合は、文化や芸術、地理的なテーマについて論じる場合が多いようだ。
このブログで採り上げて来た 東洋、アジア関連のGHQ焚書
これまで、本のタイトルの中に「東洋」「アジア(亜細亜)」を含むGHQ焚書を何点かこのブログで紹介させていただいてきた。該当記事をブログカード化したので、興味のある記事があればアクセスしていただくとありがたい。
東洋、アジア関連のGHQ焚書リスト
今回はGHQ焚書リストの中から、本のタイトルに「東洋」「アジア(亜細亜)」を含むものを絞り込んでみた。個別の国に関してはこれまで紹介させていただいたリストで確認願いたい。
タイトル | 著者・編者 | 出版社 | 分類 | 国立国会図書館デジタルコレクションURL 〇:ネット公開 △:送信サービス手続き要 ×:国立国会図書館限定公開 |
出版年 | 備考 |
亜細亜建設者 | 大川周明 | 第一書房 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1918531 | 昭和16 | |
アジア古典の復興 | 志田延義 | 日本放送協会 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1123210 | 昭和19 | ラジオ新書 ; 106 |
アジア侵掠秘史 | 桑原三郎 | 清水書房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1707981 | 昭和16 | |
亜細亜侵略史 | 高橋 勇 | 霞ヶ関書房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1918983 | 昭和16 | |
アジア宣戦 | 清水宣雄 | アジア問題研究所 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1262029 | 昭和13 | |
亜細亜中原の風雲を望んで | 井上雅二 | 照文閣 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1878344 | 昭和17 | |
亜細亜と阿弗利加 | 中平亮 | 平凡社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1214718 | 昭和8 | 世界の今明日叢書 ; 第6巻 |
アジアに叫ぶ | 土井晩翠 | 博文館 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1112463 | 昭和18 | |
アジア年鑑1935 | 日本国際問題調査会編 | 河出書房 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1117665 | 昭和10 | |
亜細亜の火薬庫 火を呼ぶ満蒙 | 三浦悦郎 | 先進社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1173486 | 昭和6 | |
アジアの見識 | 小林 元 | 龍吟社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877059 | 昭和18 | |
亜細亜の将来と主盟日本の態度 | 山道襄一 | 日本人社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1270387 | 昭和11 | |
亜細亜の新興国アフガニスタン | 尾崎三雄 | 日本国際協会 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1687086 | 昭和14 | 日本国際協会叢書 ; 第208輯 |
亜細亜の旅人 | 林 房雄 | 金星堂 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1685945 | 昭和15 | 新選随筆感想叢書 第10 |
アジアの光 | 朝日新聞社編 | 朝日新聞社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1041957 | 昭和18 | |
アジアは一つなり | 情報局 編 | 内閣印刷局 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1263031 | 昭和18 | 週報叢書 ; 第14 |
アジア文化 | 精神科学会 | 目黒書店 | 国立国会図書館に蔵書なし あるいはデジタル化未済 |
昭和14 | ||
アジア文化の基調 | 高楠順次郎 | 万里閣 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1914543 | 昭和18 | Kindle版あり |
亜細亜民族起つ | 中平亮 | 東洋研究会 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1445187 | 昭和7 | 東洋研究叢書 ; 第4巻 |
アジア民族興亡史観 | 松本君平 | アジア青年社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1459164 | 昭和18 | |
亜細亜民族と太平洋 | 松本悟朗 | 誠美書閣 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1273685 | 昭和17 | Kindle版あり |
アジア民族の中心思想 印度篇 |
高楠順次郎 | 大蔵出版 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1913135 | 昭和16 | Kindle版あり |
アジア民族の中心思想 支那・日本篇 |
高楠順次郎 | 大蔵出版 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1040365 | 昭和13 | Kindle版あり |
アジア問題講座第一巻 政治軍事編1 |
矢部良策編 | 創元社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1918997 | 昭和14 | |
アジア問題講座第四巻 経済産業篇 |
矢部良策編 | 創元社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1914073 | 昭和14 | |
アジア問題講座第九巻 社会風俗編 |
矢部良策編 | 創元社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1914092 | 昭和15 | |
アジアを奪ふもの | 本山桂川 | 国民文化書院編纂所 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1686756 | 昭和14 | 東亜史談文芸. 第1輯 |
英聯邦と東洋 | 伊東敬 | 大和書店 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1444907 | 昭和19 | |
欧米勢力の東洋進出 | 太平洋問題調査部 | 日本国際協会 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1280854 | 昭和14 | 太平洋問題資料. 第3 |
革命亜細亜展望 | ラス・ビハリ・ボース | 万里閣書房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1180019 | 昭和5 | |
軍縮と新聞ニユース : 付・咆へる赤露、英の東洋逆襲 |
加藤万治 | 加藤万治 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1450505 | 昭和10 | |
国民に叫ぶ : 亜細亜の黎明に立ちて | 奥村喜和男 | 大日本雄弁会講談社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1460189 | 昭和17 | |
新亜細亜小論 | 大川周明 | 日本評論社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1044933 | 昭和19 | 日本評論叢刊 ; 1 2016中公文庫プレミアムで復刻 |
新亜細亜の誕生 | 村田光烈 | 人文閣 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1459166 | 昭和17 | |
新東洋の建設 | 竹下文隆 | 東方公論社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1220708 | 昭和13 | |
西南アジアの趨勢 | 内藤智秀 小辻節三 小林元 |
目黒書店 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/3440496 | 昭和17 | アジア歴史叢書10 |
西洋文明の没落 : 東洋文明の勃興 | 福沢桃介 | ダイヤモンド社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1130737 | 昭和7 | 2022ダイレクト出版で復刻 |
赤色アジアか防共アジアか | 中保与作 | ダイヤモンド社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1441258 | 昭和12 | |
大亜細亜主義 | 中平亮 | 日本評論社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1272754 | 昭和8 | |
大アジア主義の歴史的基礎 | 平野義太郎 | 河出書房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877410 | 昭和20 | |
大亜細亜先覚伝 | 田中正明 | 象山閣 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877209 | 昭和17 | |
対支政策の本流 : 日本・東洋及今日の世紀 |
中山 優 | 育成社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1221380 | 昭和12 | |
大東洋の危機 : 英国よアジアより手を引け |
大阪時事新報社 | 大阪時事新報社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1093923 | 昭和13 | |
中アジアの風雲 | 内藤智秀 三橋富治男 田邊宗史 他 |
目黒書店 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877900 | 昭和16 | アジア歴史叢書 ; 第9 |
ドイツはアジアをかく見る | ウェルネル・A・ローエ | 南北社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877522 | 昭和16 | 太平洋問題新書 ; 2 |
東南亜細亜諸国 | 野波静雄 | 平凡社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1214717 | 昭和8 | 世界の今明日叢書 第5巻 |
東南アジア地政治学 : 白色・赤色・黄色間の将来の戦場 |
クルト・ヴィールスビツキイ 井汲越次訳 |
科学主義工業社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1877820 | 昭和16 | |
東南アジア文化圏史 | 舟越康壽 | 三省堂 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1042495 | 昭和18 | |
東洋芸術と大東亜教育 | 金原省吾 | 第一出版協会 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1871765 | 昭和17 | 大東亜教育叢書 |
東洋政治学 | 浜薫明 | 巌松堂書店 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1441588 | 昭和14 | |
東洋政治哲学 : 王道の研究 | 安岡正篤 | 玄黄社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1878394 | 昭和18 | 2003致知出版社で復刻 |
東洋精神の復活 | 伊福吉部隆 | 第一出版協会 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1272213 | 昭和9 | |
東洋に於ける素朴主義の民族と 文明主義の社会 |
宮崎市定 | 富山房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1918128 | 昭和15 | 支那歴史地理叢書 ; 第4 |
東洋の風雲急 | 松尾正道 | 新東洋社 | 国立国会図書館に蔵書なし あるいはデジタル化未済 |
昭和9 | ||
東洋は血の臭ひがする 第二世界大戦 |
足立六郎 | 一心社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1212974 | 昭和8 | |
東洋問題十八講 | 満川亀太郎 | 白鳳社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1466203 | 昭和6 | |
南方亜細亜の文化 | 満鉄東亜経済調査局 | 大和書房 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/3438270 | 昭和17 | 新亜細亜叢書 ; 4 |
西亜細亜民族 | 岡島誠太郎 三島安精 内藤智英 |
六盟館 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/3438273 | 昭和18 | 民族叢書 ; 6 |
日清日露戦争物語 : 附・アジアの盟主日本 |
菊池寛 | 新日本社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1718008 | 昭和12 | 世界戦争物語全集 ; 5 Kindle版あり(いざなみ文庫) |
日本精神とアジア自治 | 利津賢一 | アジア自治協会 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1099203 | 昭和12 | アジア自治運動叢書 ; 第1輯 |
農士道 : 東洋農道の教学 | 菅原兵治 | 旺文社創立事務所 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1244656 | 昭和19 | |
発展日本の目標 アジア体制への道 |
河相達夫 | 中央公論社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1463539 | 昭和13 | |
人・道・自然 : 東洋のこころ | 樋口功 | 湯川弘文社 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1039643 | 昭和19 | |
風雲の亜細亜 | 良島栄六 | 近代社 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1106772 | 昭和8 | |
婦人亜細亜(月刊) | 毎日新聞社 編 | 毎日新聞社 | 国立国会図書館に蔵書なし あるいはデジタル化未済 |
昭17-18 | ||
復興アジア論叢 | 大川周明 藤森清一郎 中山優 他 |
国際日本協会 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1044695 | 昭和19 | |
見たまゝの南方亜細亜 | 高岡大輔 | 日印協会 | △ | https://dl.ndl.go.jp/pid/1876268 | 昭和14 | |
南アジア民族政治論 | 大岩誠 | 万里閣 | 〇 | https://dl.ndl.go.jp/pid/1459137 | 昭和17 | 国防文化撰書 ; 4 |
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