対外戦争

日清戦争・日露戦争

日露戦争に出征した猪熊敬一郎の遺著『鉄血』を読む~~GHQが焚書処分した明治期の著作3

前回は「GHQ焚書」で、一兵卒として日露戦争に出征した大月隆仗の戦記である『兵車行』を採り上げたが、今回は歩兵第一連隊の小隊長として出征し、連隊旗手として軍旗を奉じて二〇三高地に突撃した猪熊敬一郎が書いた『鉄血』を紹介したい。この本は、猪熊...
日清戦争・日露戦争

一兵卒の書いた日露戦争体験記『兵車行』を読む~~GHQが焚書処分した明治期の著作2

GHQが焚書処分した明治時代に書かれた作品紹介の第二回目だが、今回は大月隆仗著『兵車行』(兵卒の見たる日露戦争)という本を採り上げたい。著者は明治十六年(1883年)の岡山県生まれで二十歳の時に陸軍歩兵上等兵として日露戦争に出征し、この本は...
義和団の乱から日露戦争

日露戦争の戦費調達で総額十三億円もの外債発行を成功に導いた高橋是清

第一回の外債発行が成功すると、政府からは二度目の募集の催促が来て、高橋是清は11月に第二回債の起債を成功させて帰国した。しかしその後も戦費調達のため、高橋は口説かれて再び米国に向かった。高橋はその後も起債の交渉を続け、総計13億円の資金調達を成功させている。
義和団の乱から日露戦争

日露戦争開戦前後の欧州列強国の思惑

日露戦争に関する欧州列強のスタンスは様々であった。フランスは日露戦争に反対していたが、ドイツはロシアが鉾先をドイツではなく極東に向けるように日露戦争を仕掛けたと言って良い。独皇帝ウィルヘルム二世は露皇帝ニコライ二世に私信を送り、「朝鮮を獲れ」とけしかけている。イギリスは当初は日露戦争反対であったが、途中で方針を転換している。
義和団の乱から日露戦争

なぜ米大統領は金子堅太郎に日露開戦当初から日本が勝つと明言したのか

金子堅太郎が渡米して大統領の口から「今度の戦いは日本が勝つ」との発言が出たのに金子は驚いた。後日金子は旧友のヘンリー・アダムス宅の晩餐会に招かれ、アダムスよりアメリカの考えを詳しく聞く機会を得た。軍事力を比較するとロシアの方が優勢であったが、一年日本が頑張ればロシアで内乱が起きてもおかしくなく、どうすれば勝てるという秘策まで授かっている。
義和団の乱から日露戦争

日露開戦を決定した直後に戦争を終わらせる準備を怠らなかった伊藤博文

明治37年2月4日の御前会議で対露断交と開戦を決定した夕刻に、伊藤博文は金子堅太郎を呼び、すぐに渡米してほしいと告げた。伊藤はこれから戦争が何年続くかわからないが、もし勝敗が決しなければ両国の間に立って調停する国が必要となる。頼むところはアメリカしかない。君は大統領のルーズベルトと懇意の仲であり、直ちにそのことを依頼してほしいと告げた。
朝鮮半島情勢と日清戦争

連戦連勝の日清戦争と下関講和交渉の決着

明治27年7月に豊島沖海戦、成歓の戦に圧勝したのち、平壌の戦、黄海海戦、鴨緑江作戦、旅順口の戦い、威海衛の戦いと連戦連勝し、28年3月には遼東半島全域を占領し、いよいよ首都北京に迫ろうとした。とうとう清は全権大使李鴻章をわが国に派遣し、下関で講和にむけての交渉を開始させた。
満州関連

戦前の日本人の満州事変の理解を知る~~『少年満洲事変と上海事変』(GHQ焚書)を読む 2

柳条溝鉄道爆破事件 前回の記事で山県信敬 著『少年満洲事変と上海事変』で、満州事変の発端となった昭和六年(1931年)九月十八日の柳条溝事件が起きるまでの支那の国情について書いた。今回はその続きである。  萬寶山事件 に次ぐに、中村大尉虐殺...
満州関連

満州事変の前に何が起こっていたのか~~『少年満洲事変と上海事変』(GHQ焚書)を読む 1

満州事変についてのGHQ焚書の9割はネット公開されていない 本のタイトルから判断して満州事変に関する本は30点がGHQによって焚書処分されているのだが、そのうち「国立国会図書館デジタルコレクション」でネット公開されているのは3点のみで、9割...
武藤貞一

GHQに封印された支那事変の真実~~武藤貞一著『日支事変と次に来るもの』

盧溝橋事件直後に出版されたベストセラー 前回に引き続いて武藤貞一のGHQ焚書を紹介したい。以前にも書いたが、武藤貞一は 戦前の昭和十一年から「大阪朝日新聞」の論説委員となり、「天声人語」欄を執筆。昭和十四年に「報知新聞」の主筆となり、戦中の...
武藤貞一

第二次世界大戦の前に戦争の形が変わった~~武藤貞一著『世界戦争はもう始まっている』を読む

1936年までに、すでに臨戦態勢に入っていた列強諸国 前回に引き続き武藤貞一の著書を紹介したい。今回は『世界戦争はもう始まっている』(GHQ焚書)である。  第二次世界大戦は1939年の9月のドイツ軍のポーランド侵攻を発端とし、その後英イギ...
国会図書館デジタルコレクション

菊池寛の名著『大衆明治史』(GHQ焚書)で日露戦争の舞台裏を読む

菊池寛といえば小説家であり劇作家でありジャーナリストであり、実業家としても文芸春秋社を創設した著明な人物だが、歴史書にもいい本をいくつか出している。戦後は歴史家が登場人物を生きた人間として描くことがほとんどなくなってしまったのだが、菊池寛は...
GHQ焚書

日露戦争後に日米関係がどう動いたか~~福永恭助著『挑むアメリカ』(GHQ焚書)を読む

福永恭助は海軍少佐で退役した後、小説や軍事に関する評論などの著作を残しているが、戦前・戦中の作品34点のうち12点がGHQによって焚書処分されている。 また、国立国会図書館デジタルコレクションでデジタル化されていながらネット公開されていない...
中国関連

GHQ焚書に描かれた、支那事変(日中戦争)における支那軍の戦い方

当時の支那軍の兵力は世界最大規模であった 小学生であった頃に実家の寺の世話方さんから少しだけ戦争の話を聞いたことがある。5分程度の短い話だったと思うが、実際に支那事変に行かれた方で「南京大虐殺なんかなかった。新聞は嘘を書いている」「支那兵は...
GHQ焚書

アメリカ人が記した真珠湾爆撃の記録~~ブレーククラーク『真珠湾』とハワイに関するGHQ焚書

GHQ焚書の中には外国人が著したものがかなり存在するのだが、当時ハワイにいて日本軍による真珠湾攻撃を目撃したアメリカ人の大学教授・ブレーク・クラークがこの攻撃の有様を記録した本がGHQによって没収処分されている。この本は、戦争たけなわの昭和...
GHQ焚書

マレー、シンガポールに関するGHQ焚書を読む~~『昭南島』『昭南島の日章旗:マレー戦線従軍記録』

イギリスはなぜシンガポールに大要塞を築いたのか~~室賀信夫著『昭南島』 昭和十七年二月にシンガポールの戦いで日本軍が勝利したことにより日本による統治が始まり、シンガポールは「昭南島(しょうなんとう)」とその名を改められたのだが、昭和二十年に...
満州関連

GHQは満州事変について何を隠そうとしたのか~~桜井忠温 著『常勝陸軍』

桜井忠温 (さくらい ただよし)は日露戦争に出征し、乃木将軍配下で旅順攻囲戦で右手首を吹き飛ばされる重傷を受け、帰還後療養生活中に執筆した日露戦争の実戦記録『肉弾』は15ヶ国に翻訳される大ベストセラーとなった。彼はその後陸軍省新聞班長を務め...
日清戦争・日露戦争

GHQが焚書処分した日清戦争・日露戦争関連書籍~~時事新報社 編『日露戦争を語る. 外交・財政の巻』

明治時代にわが国が国運をかけて戦った日清戦争や日露戦争については、戦後は日本史の概説書か小説の世界でしかお目にかからなくなっているのが現状だが、戦前には当時の世界情勢から詳しく解き明かした本や、詳しい戦記が多数出版されていた。残念ながら、そ...
中国関連

GHQが焚書処分した日中戦争に関する本~~本多熊太郎『欧洲情勢と支那事変』

「支那事変」は、昭和十二年(1937年)七月七日の盧溝橋事件から始まった日中紛争を意味するが、当初は「北支事変」と呼ばれ、戦域が拡大してから「支那事変」あるいは「日支事変」と呼ばれるようになり、戦後は「支那」という言葉は避けて「日華事変」と...
GHQ焚書

GHQが焚書処分した戦争に関する書物~~小林騏一郎『日・ソ・支戦争 : 世界大戦の前に来るもの』

今回はGHQ焚書リストの中から「戦争」「大戦」をタイトルに含む本を集めてみたが、多くの書物で戦前の世界情勢に踏み込んで詳しく書かれている。そこには、今まで教科書やマスコミの解説ではお目にかかれないような内容が記されていることがよくあり、重要...
GHQ焚書

GHQが焚書処分した青少年向けの書籍~~桜井忠温「子供のための戦争の話」

GHQが没収廃棄して、戦後の日本人に読めないようにさせた本のなかに、青少年向けの本が少なからずあるが、これらの本は著者が若い世代にも理解しやすいようにやさしい言葉で記されているのでありがたい。実際何冊か読んでみると、戦後になって多くの史実が...
ロシア・ソ連

日露戦争で日本の外債発行を助けたジェイコブ・シフはロシア革命勢力を支援した

ジェイコブ・シフが日露戦争で日本を支援した理由は、ユダヤ人を迫害していたロシアの変革を期待した点にある。シフはポーツマス講和会議の時にユダヤ人の代表としてロシア全権のウィッテと会いユダヤ人の境遇改善を訴えたが物別れとなり、アメリカに圧力をかけて米露通商条約を廃棄させた。